年齢を重ねるにつれて、「疲れやすい」「肌荒れしやすい」という不調を感じていませんか?それは免疫力が低下しているサインかもしれません1。
私たちの身体には、体内へ細菌やウイルスが侵入することを防ぐシステムが存在し、病気から身を守っています。
本記事では、免疫力アップが期待できる食事のポイントや免疫力を高める生活習慣をご紹介します。食事や食べ方を工夫し、健康的な毎日を送りましょう。
免疫力とは?免疫の種類と検査方法
「免疫力を高める」という言葉をよく耳にしますが、そもそも免疫力とはどんなことを指すのでしょうか。
ここでは、免疫の種類や検査方法についてご紹介します。
免疫の種類
免疫力とは細菌やウイルスなど異物の侵入や、異常な細胞から生体を防御する力のことです。免疫には大きくわけて自然免疫と獲得免疫の2つがあります。
自然免疫
自然免疫は、生まれつき備わっている免疫のことです。
体内に侵入した病原体を最初に認識してすぐに攻撃・排除する働きがあります。また、炎症反応を起こし、病原体を排除する機能を働かせる役割があります。
獲得免疫
獲得免疫とは、病原微生物の再度の侵入に備えるため体内に構築された免疫機能です。
病原体を記憶・識別するための特異性を持つことで、同じ病原体が侵入したときに素早く免疫反応が働きます2。
この免疫を担う白血球のうち、B細胞は病原体に合わせた抗体を生成し、T細胞は免疫反応を調整する司令塔のような働きや、病原体を直接攻撃して排除する役割があります。
免疫機能の低下によってさまざまな感染症にかかりやすくなる一方、免疫機能が過剰に働くと、自己免疫疾患やアレルギーとして身体に現れます3。
自然免疫と獲得免疫が正常に機能し、病原体やがん細胞などの異物を攻撃・処理することで、感染症やアレルギーなどから身を守っています。
免疫力の検査方法
免疫力を確認する方法として、主に血液一般検査・免疫グロブリン定量検査の2つの検査があります。
血液一般検査
血液一般検査では、白血球数やその内訳であるリンパ球、好中球などの割合を測定します。これらの数値が低い場合は、身体の抵抗力が低下している可能性があります。
| 男性 | 女性 | |
| 白血球 | 3,300~8,600(/μL) | |
| リンパ球 | 26.8~43.8(%) | 24.5~38.9(%) |
| 好中球 | 45.2~68.8(%) | 49.7~72.7 (%) |
| 単球 | 2.7~7.9(%) | 1.7~8.7(%) |
| 項目 | 基準範囲 | |
|---|---|---|
※文献4,5を参考に作成
免疫グロブリン定量検査
免疫グロブリン(Ig)とは、抗体の役割をもつタンパク質の一種です。免疫グロブリン定量検査では、体内の抗体をつくる力を測定します。
なかでも、免疫グロブリンG(IgG)は抗体をつくることに大きく関与しているため、IgG低下によって感染リスクが高まる傾向があります。
| IgG | 861〜1,747 |
| IgA | 93~393 |
| IgM | 36~245 |
| 検査項目 | 基準範囲(mg/dL) |
※文献4,5を参考に作成
また、「免疫状態質問票(ISQ)」は免疫状態を自己評価するチェック表です6。
以下のような症状が過去12カ月間にどれくらいの頻度で発生したか、0~4のうち、あてはまる番号に〇をつけてみましょう。
| 項目 | 症状 | 頻度(0~4) |
|---|---|---|
| 1 | 鼻水・喉の痛み | 0:まったくない 1:ときどき 2:定期的に 3:よくある 4:ほぼいつも |
| 2 | 急な発熱 | 0:まったくない 1:ときどき 2:定期的に 3:よくある 4:ほぼいつも |
| 3 | 下痢 | 0:まったくない 1:ときどき 2:定期的に 3:よくある 4:ほぼいつも |
| 4 | 頭痛 | 0:まったくない 1:ときどき 2:定期的に 3:よくある 4:ほぼいつも |
| 5 | 咳 | 0:まったくない 1:ときどき 2:定期的に 3:よくある 4:ほぼいつも |
| 6 | 筋肉痛・関節痛 | 0:まったくない 1:ときどき 2:定期的に 3:よくある 4:ほぼいつも |
| 7 | 皮膚トラブル | 0:まったくない 1:ときどき 2:定期的に 3:よくある 4:ほぼいつも |
※文献6を参考に作成
各項目の点数(0〜4)を合計します。点数が高いほど、免疫機能が低下している可能性があります。
| 合計点数 | 評価 (mg) |
|---|---|
| 0~6点 | 良好 |
| 7〜13点 | やや注意 |
| 14点以上 | 注意 |
※文献6を参考に作成
ISQは、血液検査なども含めて総合的に医師がその結果を評価するものですが、自分の免疫状態を簡単にチェックできるので、日常生活に取り入れてみましょう。
免疫力と食事の関係
免疫力と食事には密接な関係があります。
例えば、白血球やリンパ球などの免疫細胞は主にタンパク質から作られているため、良質なタンパク質を摂取することは免疫細胞の活性化につながります。
また、腸には免疫細胞の約7割が存在しています。腸内細菌の種類や数を増やすなど、腸内環境を整えることが免疫力向上に役立ちます。腸内細菌の栄養源となる穀類や豆類、果物類などの植物性食品を摂取するとよいでしょう7。
免疫力を高める栄養素とは?
免疫力を高める栄養素には、主に以下のようなものがあります。
タンパク質
タンパク質はすべての免疫細胞の材料となり、不足した場合は免疫細胞の数や活動力の低下が起こります。
動物性と植物性のどちらもバランスよく摂ることが大切です。鶏むね肉、鮭、チーズなどに多く含まれます。
ビタミン類
多くのビタミンには抗酸化作用があります。ビタミンの持つ抗酸化作用により、抗炎症作用、免疫を活性化させる作用8などが高まる可能性があります。
抗酸化作用を持つ主なビタミンは、「ビタミンACE(エース)」と呼ばれる次の3つです。
- ・ビタミンA
・ビタミンC
・ビタミンE
このほかにもビタミンK、ビタミン B1、ビタミンB2、ビタミンB6にも抗酸化作用があるほか、間接的に抗酸化作用を発揮するビタミンDなどがあります8。これらはいずれも緑黄色野菜に多く含まれています。
また、ビタミンAはうなぎやレバーなどにも多く含まれ、ビタミンCは果物にも豊富に含まれています。ビタミンDはきのこ類や鮭などに多く含まれています。
ミネラル類
ミネラル類は免疫細胞の活動をサポートする働きがあります。
亜鉛が不足すると、一部の免疫の働きが阻害を受け、免疫機能が低下することが知られています9。また、マグネシウムは免疫を制御する機能が示されています。これらのミネラルを豊富に含む食材を摂取できるとよいでしょう。
亜鉛を多く含む食材
魚介類:牡蠣(生)、カタクチイワシ(田作り)、しらす干し、かつお節
肉類:豚肉(レバー、ロースなど)、牛肉(もも・ロースなど)
豆・果実類:きな粉、納豆、油揚げ、ごま、アーモンド、落花生
マグネシウムを多く含む食材
藻類:あおさ、あおのり、わかめ、昆布、ひじき
魚介類:干しえび、しらす干し、あさり
野菜・豆類:切り干し大根、ほうれん草
豆類:きな粉、油揚げ、納豆、落花生
そのほかの栄養素
ほかにも、発酵食品や食物繊維を摂ることで腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えることも大切です。腸内環境が整うと腸管免疫が活性化されます。
納豆やキムチ、ヨーグルトなどの発酵食品、ごぼうや海藻類など食物繊維を多く含む食品を意識的に摂るとよいでしょう。
免疫力アップが期待できる食事の摂り方
免疫力を高めるための食事の摂取方法を3つご紹介します。
発酵食品を意識して摂取する
腸内細菌を増やすには、発酵食品を取り入れるとよいでしょう。
納豆やキムチなどに含まれる細菌が体内に入ることで腸内細菌が増加することがわかっています7。腸内環境を整えることは、好中球やリンパ球などの免疫細胞の活性化につながります。
タンパク質をしっかりとる
タンパク質は好中球やリンパ球などの免疫細胞や、抗体を生成するために必要な栄養素です。タンパク質の不足によって免疫細胞が十分に生成されなくなり、感染症への抵抗力低下につながります。
特に免疫機能で重要な働きを持つIgAやIgGはそのほとんどがタンパク質から作られています。バランスのよい食事で、しっかりとタンパク質を摂取しましょう。
朝食をしっかりとって体内リズムを整える
体内時計は1日25時間のため、1時間のズレをリセットする必要があります10。起床後に朝食をとることで体内時計がリセットされ、腸管免疫の働きが高まるといわれています。
また、継続的な体内時計の乱れは、免疫機能の老化を促進するという研究もあります。免疫機能を維持するためにも、朝食をしっかりとって、体内リズムを整えましょう。
免疫力アップが期待できるおすすめメニュー
例として、免疫力アップが期待できる一日の献立をご紹介します。
麦ごはんと納豆が中心の朝食
| もち麦入りご飯 納豆+刻みネギ ほうれん草と豆腐のみそ汁 キウイフルーツ1個 |
もち麦入りのごはんで食物繊維とβ-グルカンを上手に摂取できます。また、納豆でタンパク質と亜鉛を取り入れることができます。
さらに、味噌汁に豆腐や緑黄色野菜を加えることで各栄養素をまんべんなく吸収できます。キウイなどの果物を添えると、忙しい朝の始まりにぴったりな朝食です。
昼食はいわしと舞茸のレモンホイル焼きなどでエネルギー補充
| いわしと舞茸のレモンホイル焼き 玄米 ひじきの煮物 具だくさん豚汁(きのこ・ごぼう) |
いわしにはタンパク質のほか、オメガ3とビタミンDが含まれます。また、舞茸にはビタミンDが豊富に含まれます。
玄米やひじきなどで食物繊維やミネラルを摂取しつつ、豚汁で不足分の栄養素を補充しましょう。活動的な昼に向いている、エネルギーとバランス重視の昼食です。
夕食は鶏のささみとしめじのソテーであっさりと鶏ささみとしめじのソテー
| 押し麦入りご飯 小松菜と高野豆腐の白ごま和え 赤パプリカとかぼちゃの温サラダ 柿のヨーグルト和え |
鶏ささみ肉としめじのソテーで、タンパク質やビタミンDを摂取できます。また、副菜でもタンパク質やビタミンC、ビタミンAを摂取し、さらにヨーグルトなどと合わせることで、おなかに優しく、免疫力アップにつながります。1日の締めくくりにぴったりの夕食です。
免疫力を高める生活習慣
免疫力を高めるために、食事や栄養のほか、適度な運動や十分な休息などの生活習慣を作るとよいでしょう。
習慣的に運動をする
習慣的な運動と免疫力について調べた研究があります11。高齢者525名を対象としたその研究によると、6カ月間の習慣的な運動によって、炎症を引き起こす物質の減少や、炎症を抑える物質の増加が報告されています。
習慣的な運動は免疫のバランスを整える可能性があるため、適度な運動習慣を心がけるとよいでしょう。
しっかりと休息をとる
免疫力を高めるためにはしっかりとした休息も必要です。慢性的な睡眠障害は炎症を強め、感染症のリスクを高める一因になります。
また逆に、感染に対する炎症反応が睡眠パターンや構造を乱すことも知られています12。普段から十分な睡眠を心がけましょう。
まとめ
免疫力を高めるためには、免疫細胞の材料となるタンパク質をはじめ、ビタミン類やミネラル類などの微量元素も大切です。また習慣的に運動をする、しっかりと休息をとることによっても免疫力の向上が期待できます。
活動的な毎日を送るためにも、食事や運動、睡眠などの生活の一部から免疫力を高める工夫をしてみましょう。



