カリウム(potassium/kalium/K)は、人の身体に不可欠なミネラルのひとつです。摂りすぎた塩分を排出する作用などがあり、カリウム不足になるとさまざまな悪影響が生じます。
しかし、カリウムの摂取が人体にとって重要だとわかっていても、「何を食べればカリウムを摂取しやすいのかわからない」「カリウムを豊富に含んだメニューを考えるのが大変」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
この記事では、カリウムの機能やカリウムを多く含んだ食品ランキングや、手軽にカリウムを摂取しやすいおすすめのメニューについて、糖尿病内科の医師が詳しく解説します。カリウム不足が気になる方のために、今日から試せる方法をまとめました。
カリウムの働きとは?
まずは、カリウムの働きと、カリウムが不足すると人の身体はどうなるのかをみていきましょう。
カリウムの働き
カリウムとはミネラルの一種で、体内の細胞が正常に働くために必要な栄養素です。成人の体内には、約120〜200gのカリウムが存在しています1。 大部分は細胞内にありますが、ごく一部は血液や骨、リンパ液にも含まれています。
カリウムの主な働きは、細胞内の水分濃度(浸透圧)を調整して一定に保つことです。また、筋肉の収縮や神経の興奮伝達にも関係しており1、手足の動きや心臓のリズムの維持など、日常の身体の動きを支えています。
さらに、体内の酸とアルカリのpHバランスを整える機能や、余分なナトリウムを排出しやすくする働き1もあります。塩分の摂り過ぎを調整するうえでも、重要なミネラルといえます。
カリウムが不足する原因と症状
カリウムが不足した場合、細胞内の水分バランスやpH調整などに影響が出るだけではありません。脱力感や食欲不振、筋無力症、不整脈、精神障害といった症状が現れることがあります1。
カリウムは果物や肉、野菜などに広く含まれているため、通常の食事をしていれば不足することはまれです2。ただし、激しい下痢や嘔吐、利尿剤などの薬を長期的に服用している場合、身体からカリウムの排出が増えて不足することがあります。
カリウムの摂取基準量
身体に必要なカリウムは、どのくらい摂取すればいいのでしょうか?厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、1日あたりの目安量は、18歳以上の男性では2,500mg、女性では2,000mgです2。
また、高血圧や脳卒中などの生活習慣病の予防を目的とした目標量は、男性3,000mg以上、女性2,600mg以上とされています2。
カリウムが多い食品ランキング
カリウムが多いのは、どのような食品なのか気になりますよね。ここでは、文部科学省の「食品成分データベース」に基づいて、身近なフルーツ、肉類、魚介類、野菜をランキング形式でご紹介します。
カリウムが多いフルーツランキング
カリウムが多く含まれている生のフルーツには、アボカドやバナナ、キウイなどがあります。なかでも、アボカドは100gあたり590mgと、多くのカリウムが含まれています。
例えば、アボカドはサラダに、バナナは朝食やおやつなどに取り入れてみるとよいでしょう。
| 食品名 | 100gあたりのカリウム量 (mg) |
|---|---|
| アボカド | 590 |
| バナナ | 360 |
| メロン (露地メロン/緑肉種/赤肉種) | 350 |
| キウイ (緑肉種/黄肉種) | 300 |
| さくらんぼ (アメリカ産) | 260 |
カリウムが多い肉類ランキング
豚ヒレ肉は、100gあたり690mgものカリウムを含んでいます。鶏ささみや鶏むね肉などは価格も手頃で、日常的に使いやすいでしょう。
同じ種類の肉でも、調理法や皮の有無によって、カリウムの含有量は異なります。
| 食品名 | 100gあたりのカリウム量 (mg) |
|---|---|
| 豚ヒレ肉 (焼き) | 690 |
| 鶏ささみ (ソテー) | 630 |
| 鶏むね肉 (皮なし/焼き) | 570 |
| 鶏ささみ (焼き) | 520 |
| 鶏むね肉 (皮つき/焼き) | 510 |
カリウムが多い魚介類ランキング
魚介類のなかでは、めかじきやさわら、まだいなどにカリウムが多く含まれています。スーパーなどでも、年間を通して購入しやすく、和食の定番として親しまれています。
魚料理を考えているときは、意識的に選んでみるとよいでしょう。
| 食品名 | 100gあたりのカリウム量 (mg) |
|---|---|
| めかじき (焼き) | 630 |
| さわら (焼き) | 610 |
| まだい (養殖/焼き) | 500 |
| まこがれい (焼き) | 490 |
| べにさけ (焼き) | 490 |
カリウムが多い野菜ランキング
カリウムが多い野菜には、ブロッコリーやほうれん草、にんじんなどがあります。普段の副菜として取り入れやすく、無理なくカリウムを補えるでしょう。
枝豆もカリウム量が多いため、冷凍庫に常備しておくと便利です。
| 食品名 | 100gあたりのカリウム量 (mg) |
|---|---|
| ブロッコリー (焼き) | 820 |
| ほうれん草 (生) | 690 |
| 枝豆 (冷凍) | 650 |
| にんじん (生) | 630 |
| めキャベツ (生) | 610 |
カリウムが多い藻類ランキング
カリウムを効率よく摂取したい場合は、藻類もおすすめです。主食に昆布を合わせたり、副菜にわかめを添えて彩りを加えたりなどの方法で、普段の食事に気軽に追加できる食材でもあります。
| 食品名 | 100gあたりのカリウム量 (mg) |
|---|---|
| 刻み昆布 | 8200 |
| わかめ (乾燥わかめ/板わかめ) | 7400 |
| ほしひじき | 6400 |
| いわのり | 4500 |
| まつも | 3800 |
カリウムが多い豆類ランキング
豆類は植物性のタンパク質と同時にカリウムを摂取しやすい食材です。豆類単体は副菜に取り入れやすい食材です。
簡単かつバランスよく豆類を摂りたい場合は、大豆の加工品である豆腐を副菜にしたり、朝の1杯に豆乳を取り入れたりするのもよいでしょう。
| 食品名 | 100gあたりのカリウム量 (mg) |
|---|---|
| 大豆 | 2400 |
| らいまめ | 1800 |
| やぶまめ | 1700 |
| べにばないんげん | 1700 |
| つるあずき | 1400 |
カリウムたっぷりおすすめメニュー
ここでは、カリウムたっぷりのおすすめメニューを厳選してご紹介します。ぜひ、試してみてください。
アボカドと鶏ささみのサラダ定食
手軽にカリウムを摂りたい方には、アボカドや鶏ささみを使ったサラダがおすすめです。アボカドは果物の中でもカリウムが豊富で、鶏ささみは低脂質・高たんぱくな肉としても知られています。
トマトやブロッコリーなども加え、オリーブオイルやレモン汁をベースにしたドレッシングで和えましょう。雑穀ごはんや具だくさんの味噌汁を加えれば、栄養バランスのよい1食になります。
さわらの塩焼きと野菜たっぷり副菜定食
魚料理でしっかりカリウムを摂りたい方には、さわらの塩焼きと野菜たっぷりの副菜定食がおすすめです。主菜のさわらは、軽く塩を振って焼くだけの簡単調理です。
副菜には、ほうれん草のおひたし、ブロッコリーのごま和えなど、カリウムが豊富な野菜を中心にします。ポン酢やごまなどを使って、できるだけ塩分を控え目にするとよいでしょう。素材の味を活かしながらも、おいしく仕上がります。
玄米ご飯や豆腐の味噌汁などを組み合わせれば、栄養バランスに配慮した夕食の完成です。
時短レシピ|豚ヒレのにんじん&ブロッコリー炒め(昆布風味)と枝豆とわかめの冷やし和え
時短で効率よくカリウムを摂りたい方には、いつもの肉野菜炒めの食材を、カリウムが多い豚ヒレ肉とにんじんとブロッコリーにすることをおすすめします。
下味をつけた豚ヒレ肉を焼いたフライパンに、にんじんとブロッコリーを加えて炒め、仕上げの味付けに刻み昆布を加えると、奥行きのある味わいの肉野菜炒めが完成します。刻み昆布は下準備不要で、乾燥したまま仕上げに加えて簡単に煮からめるだけなので、余計な手間はかかりません。
副菜には、枝豆とわかめの冷やし和えを合わせるとよいでしょう。味付けは少量の酢と醤油とごま油で十分です。冷凍枝豆や乾燥わかめなどの常備している食材でサッと1品を添えることができます。
時短レシピ|鮭と小松菜のわかめバターポン酢炒めとにんじんと大豆のごまマリネ
洗い物が少ない時短レシピなら、ポン酢バターが香る炒め物が簡単で食欲をそそります。カリウムの多い鮭をメインに、下準備不要の小松菜、そして歯ごたえと出汁で味の深みを際立てるわかめを組み合わせると、効率よくカリウムを摂取することができます。
下味のついた鮭をフライパンで焼き、火が通ったらフライパンの端に寄せ、空いたスペースで残りの食材を炒めます。仕上げにポン酢バターを絡めましょう。10分くらいで完成する時短メニューです。
副菜に用意するにんじんと大豆のごまマリネは、3分でできる時短料理です。大豆は冷凍大豆を使用し、にんじんと合わせて電子レンジで3分加熱します。仕上げにマリネ液を馴染ませれば完成します。
カリウムを食品で摂取できないときは
食事から十分なカリウムの摂取が難しい場合、サプリメントの利用を検討するのも選択肢のひとつです。
ただし、腎臓の病気を抱えている方は体内にカリウムが蓄積しやすいため、自己判断でサプリメントを摂取するのは避けましょう。カリウムを摂りすぎると、血液中のカリウム濃度が高くなる高カリウム血症を引き起こし、心臓の機能に影響することもあります2。
腎臓以外の病気の場合でも、服薬中の方や持病がある方は、サプリメントを利用する前に主治医への相談を検討しましょう。
まとめ
カリウムは、体内の細胞が正常に働くために欠かせない栄養素です。カリウムが不足すると、脱力感や食欲不振、筋力の低下など、さまざまな症状が現れることがあります。
カリウムは、アボカドやほうれん草、鶏ささみなどをはじめ、身近な食材から摂取できます。今回紹介したカリウムたっぷりのメニューも、ぜひ参考にしてみてください。
無理なく手軽に取り入れながら、バランスのよい健康的な食生活を心がけましょう。



