「朝起きた瞬間から身体が重い」「あんなに好きだった趣味にワクワクしない」「ささいなことでイライラしてしまう」
以前にはなかったこのような悩み。
それは単なる疲れや年齢のせいではなく、「テストステロン」が不足しているサインかもしれません。
本記事では、テストステロンの役割や分泌のメカニズム、心と身体にどのような影響を与えているか、などについて解説します。
テストステロンの理解を深め、元気や健康に役立ててくださいね。
テストステロンとは
テストステロンは、男性ホルモンの一種として知られていて、筋肉量や骨密度、性機能の維持に重要な役割を果たします1。
また、脳の働きにも影響し、意欲や集中力を高め、ストレスへの耐性を支える役割もあります2。分泌量が低下すると、疲労感や気分の落ち込み、筋力の低下などの不調が現れることがあります。
テストステロンは、心身の健康維持を支える重要なホルモンなのです。
テストステロン分泌のメカニズム
テストステロンは主に男性の精巣で作られる男性ホルモンで、海馬、筋肉、脂肪 でもつくられています2。
まず脳の視床下部が命令を出し、下垂体が黄体形成ホルモンを精巣に送ります。精巣のライディッヒ細胞がその信号を受け取り、テストステロンを生み出します。作られたテストステロンが増えすぎると、脳に分泌を抑える調整が入ります。
このように脳と精巣が連携して保たれている分泌バランスですが、分泌量は年齢によって大きく変動します3。
テストステロンの分泌量は思春期に増え、20〜30代でピークを迎えます。30代以降は、加齢による性ホルモンの変化に伴い、テストステロンの分泌量は低下していきます3,4,6。
加齢やストレスでテストステロン値が減少すると、LOH症候群(男性更年期障害・加齢性腺機能低下症)につながります。
一方で、30代以降の分泌量の変化は個人差が大きく、高齢でもテストステロン値が高い男性もいます3,4。
またストレスや太りすぎもテストステロンの分泌を減らす原因となります。
テストステロンの主な役割
テストステロンは、筋肉や骨の健康、性機能の維持、体脂肪の調整、そして心の安定に関わる重要なホルモンです。
思春期以降に増え、男性らしい身体をつくるだけでなく、成人後も体力や意欲を支えます。
年齢や生活習慣によって分泌が低下すると、体調や気分の変化が現れやすくなるため、日常のケアで適正なホルモンバランスを保つことが大切です。
筋肉・骨格の形成・維持
テストステロンは筋肉のタンパク質合成を高め、筋力や筋肉量を維持・増強する働きがあります。
骨では骨形成を促し、骨吸収を抑えることで骨密度を高め、骨を強くします。
そのため、テストステロンが減少すると、若い人でも筋肉量や骨量が低下します4。
また、テストステロンには造血作用もあり、思春期以降のテストステロンが上昇する時期には、ヘモグロビンの値が15〜20%増加します4。
性機能の維持
テストステロンは男性の性機能を身体と心の両面から支えています3,4。
男性の場合、二次性徴期の生殖器の発達、その後の性欲の維持や射精・勃起作用にテストステロンが関与しています。
【テストステロンの性機能への役割】
- ・陰茎の増大
・精子の形成
・勃起や射精
・性欲の増加・維持
LOH症候群でテストステロン値が低下した人にテストステロンを補充すると、性欲や性機能障害(ED)、夜間勃起のほか、性的な満足度が改善することがわかっています4,5。
意欲の向上・競争心の醸成
テストステロンは、チャレンジ精神を旺盛にし、競争心を強くするなど、意欲的な行動の源泉になります3,5。
テストステロンは、競うことで分泌が増えることがほか、勝ち負けによりテストステロンの値が変動することがわかっています。
また、社会的地位の獲得やリスクテイクといった行動の源泉にもテストステロンが関わっていることも明らかになっており、挑戦や活力に関わるホルモンと言えます2。
テストステロンが不足・分泌量が減ったときの影響と原因
テストステロンの分泌が減ると、筋肉や骨、気力・集中力など心の働きにも影響します。
加齢やストレス、睡眠不足、肥満などが脳からのホルモン信号を妨げ、精巣の働きを弱めることがテストステロンが減少する主な原因とされています3,4。
ここでは、テストステロンの低下に伴う影響をみていきましょう。
性欲低下・勃起不全(ED)
テストステロンが低下すると性欲の低下や、夜間睡眠時・早朝の勃起の減少、勃起不全(ED)が起こりやすくなります。
こうした症状は世代を問わず現れ、思春期以降の低下では性欲減退や勃起・射精のトラブルがよくみられます。また、中高年の男性更年期(LOH)では、夜間の勃起減少が特徴です4
生活習慣病リスク上昇
テストステロンの低下は脂質代謝やメタボリックシンドローム、2型糖尿病など、生活習慣病とも深い関わりがあります。
テストステロンが低下すると筋肉量が減少し、基礎代謝が落ちて体脂肪が増えやすくなります。また、テストステロンと内臓脂肪量は関連することが報告されており、肥満によりテストステロンが低下することもわかっています4。
テストステロンとインスリン抵抗性も相関があり、テストストロン値が低い人は2型糖尿病のリスクが高まるほか、高血圧や脂質異常症、メタボリックシンドロームとの関連も報告されています。
疲労感・気力の低下
テストステロンは脳のやる気や集中力を高める働きもあるため、減少すると慢性的な疲労感や無気力感が生じやすくなります。
テストステロンが低下することで、知的活動や認知機能・見当識などの低下、気分が安定しなかったり、睡眠障害につながることもあります4。
テストステロンが過剰に分泌された場合のリスク・悪影響
テストステロンは体づくりや心の活力に欠かせませんが、過剰になるとホルモンバランスが崩れ、逆に健康を損なうことがあります。
肌トラブルの増加
テストステロンが過剰になると、皮脂腺が活発になり皮脂量が増加します。 その結果、毛穴の詰まりや炎症が起きやすく、ニキビや吹き出物などの肌トラブルが目立つことがあります。
この原因は、ホルモンバランスが崩れることで皮膚のターンオーバーも乱れ、肌のコンディションが不安定になってしまうためです7。
怒りの増幅や協調性の低下
テストステロンは攻撃性や社会的優位性に関わるホルモンです。分泌量が増えることでイライラしたり感情が抑えられなくなる可能性があります。
テストステロンを注射した実験では、被験者の怒りや敵意の感情が強まったり、言語的な攻撃性が高まることが確認されています2。
テストステロンが感情コントロールに与える影響に関する研究では、テストステロン値が高い人は、協調性のスコアが低い傾向がありました。また、女性においては、感情のコントロールを弱める可能性も示唆されています8。
テストステロンのホルモンバランスを整えるポイント
テストステロンは加齢だけでなく、不摂生やストレスによっても減少してしまいます。
一度低下すると、気力の減退や筋力・性機能の低下といった悪循環に陥ってしまうため、ホルモンバランスをコントロールすることが重要です。
筋力トレーニング
筋肉に負荷をかけることで、テストステロンの分泌が増えます9。
筋力トレーニングを行うことで、テストステロンの分泌を促され、筋肉や骨を強化するという好循環を作ることができます。
有酸素運動
適度な有酸素運動を取り入れることでもテストステロン量を増やすことができます。
肥満傾向のある男性を対象に、ウォーキングやジョギングをとり入れたことで、血中のテストステロン値が増加したという研究10のほか、高強度インターバルトレーニング(HIIT)が効率的にテストステロンを増やしたという研究から、有酸素運動がテストステロン量を増やすことに効果的であることがわかります11。
一方で、持久力が求められる運動がテストステロン値を低下させるという指摘もある12ため、運動を取り入れる場合は適度な運動量が望ましいと考えられます。
食事管理
テストステロンなど、ホルモンバランスを整えるためには、バランスの良い食事が大切です。
「肥満の解消」と「適切なカロリー摂取」が大切で、良質な油(n-3系脂肪酸、不飽和脂肪酸等)や、不足しがちなミネラル(亜鉛・マグネシウム)を補うことが、テストステロン分泌の土台となります。
食品ではロイヤルゼリーや乳酸菌(プロバイオティクス)の摂取でテストステロンの上昇が確認されており、これらを日常の食事に賢く取り入れることも効果的でしょう4。
テストステロンに関するよくある疑問
ここでは、テストステロンに関する疑問点について解説します。
テストステロンの別名は?
テストステロンは「社会性ホルモン」と呼ばれることもあり、集中力や仕事のパフォーマンスにも影響するといえます。
またテストステロンの値が高い人は、協調性が高くチャレンジ精神旺盛という印象を与えることも多くあります13。
テストステロンの分泌を促す食べ物やサプリメントはある?
テストステロン値を高めることにつながる食材として、赤身の肉や青魚、ニンニク、コーヒー、オリーブオイル、ロイヤルゼリーなどの食品があげられます。
ただし、これさえ食べればいいというものはなく、バランスの良い食事を意識することが大切です。
また、亜鉛やビタミンDなど、テストステロンの分泌を促すと考えられるサプリメントも販売されています。
不足した栄養素をサプリメントで補うことは有効とされていますが、食生活や生活習慣を整えることを基本とし、サプリメントは補助的な栄養補給として活用するとよいでしょう。
男性ホルモンが増えると女性の身体はどうなる?
女性のおける高アンドロゲン血症では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が起こりやすく、月経異常やAGA、ニキビ、不妊リスクが増加します。
また声の低音化や筋肉質化などの男性化の症状が報告されています。
これらは病気ではない場合もありますが、急に変化してきた場合は医師の診察をおすすめします14。
テストステロンが多いと脱毛症・AGAになる?
男性ホルモンが多い人は髪の毛が薄くなる、と言われていますが、正しくはありません。
AGAには、テストステロンが5αリダクターゼにより変換されてできるDHT(ジヒドロテストステロン)が原因とされています15。
テストステロン量とDHTへの変換量は相関するわけではないため、テストステロン量が多いからといってAGAになるとは限りません16。
まとめ
テストステロンが減少すると、慢性的な疲労感や意欲の低下を招き、日々のパフォーマンスを大きく左右してしまいます。その原因は加齢だけでなく、肥満やストレスといった生活習慣とも深く結びついています。
しかし、適切な筋トレやバランスの良い食事、質の高い睡眠を心がけることで、ホルモンバランスを整えることは可能です。
まずは日々の生活の中で、脳と体の健康を意識した小さな習慣から見直してみましょう。



