「最近なんだか疲れやすい」「立ちくらみが増えた気がする」。
そんな不調は、もしかすると貧血のサインかもしれません。特に女性に多い鉄欠乏性貧血は、日々の食事が大きく関係しています。
そこで本記事では、貧血を防ぐために意識したい食べ物や栄養素について、わかりやすく解説します。
鉄分を手軽に摂る方法もお伝えするので、ぜひ試してみてくださいね。
これって貧血?貧血の診断基準と症状
貧血とは、赤血球の数や、赤血球が酸素を運搬する能力が、身体が必要とする酸素量に対して不十分になってしまっている状態のことです1。
血液検査では、赤血球の数や、血色素量(けつしきそりょう:ヘモグロビンの量)、ヘマトクリットという数値で貧血かを判断します。
貧血は日本人全体の約15%にみられ、特に20〜49歳の女性においては有病率は約20%、それ以降の年齢の女性も、64歳までは男性よりも貧血の有病率が高いということがわかっています2。
貧血が起こる原因はさまざまで、貧血もいくつかの種類に分けられています。また、貧血になると、身体は必要な酸素を受け取ることができず、さまざまな身体の不調が生じます。
ここではまず、貧血の種類や貧血を疑う症状、そして病院での診断基準をご紹介します。
貧血の種類
貧血の代表的な種類を見ていきましょう。
鉄欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏性貧血
鉄やビタミンB12などの栄養不足による貧血は、最も多いタイプです。特に、日本人女性の約10%は鉄欠乏性貧血という報告もあります3。
栄養不足による貧血としては、亜鉛や銅などの微量元素(人体を構成するミネラルのうち極めて少量しか存在しないもの)の不足によるものもみられます。
溶血性貧血
溶血性貧血は、赤血球が何らかの原因で壊されてしまうために起こります。
原因としては、遺伝的に壊れやすい赤血球であること、赤血球に対する自己抗体ができてしまうことなどがあります。
慢性炎症に伴う貧血
関節リウマチなどの慢性的な炎症が起こっている場合にも、貧血になることがあります。
長期にわたる感染症、がんや腎臓病なども要因とされ、特に高齢者にその傾向がみられます。
再生不良性貧血
再生不良性貧血は、何らかの原因で赤血球や白血球、血小板のすべてが減少する疾患で、指定難病のひとつです。
血液がつくられる骨髄中で、血球のもととなる造血幹細胞が減少することで血球も減少します。
貧血の自覚症状
貧血の進行に伴って現れる自覚症状には、以下のようなものがあります3。
- ・だるさ、疲れやすさ
・動悸
・息切れ
・めまい
・頭痛
・足のむくみ
また、見た目の変化としては、顔色が悪くなったり、まぶたの裏側が白っぽくなったりすることもあります。
さらに、鉄欠乏性貧血では爪がスプーンのような形になるさじ状爪、溶血性貧血では白目や皮膚が黄色くなる黄疸(おうだん)など、貧血の原因によって特徴的な症状が現れることもあります。
病院での貧血の診断基準
貧血は、赤血球に含まれるヘモグロビンの濃度が以下のような基準値以下に低下したときに診断されます。
- ・成人男性:13.0 g/dL以下
・女性:12.0 g/dL以下4
さらに、MCV(赤血球体積)やMCH(赤血球に含まれるヘモグロビンの量)、MCHC(赤血球体積に対するヘモグロビンの割合)なども貧血の原因を推測するために役立ちます3。
鉄欠乏性貧血が疑われる場合には、身体に蓄えられている鉄分の量を反映するフェリチンという項目なども検査されます4。
セルフチェック!貧血危険度を確認
以下のような項目に当てはまるものが多い方は、貧血の可能性があります3。
- ・朝起きたときにふらつくことが多い
・階段を上るとすぐに息切れする
・顔色が悪い、青白いと言われる
・爪が反っている、割れやすい
・髪の毛が抜けやすくなった
・動悸がすることがある
・肌が乾燥しやすくなった
・集中力が続かない、イライラしやすい
・月経の量が多い、期間が長い(女性の場合)
鉄分の摂取基準量と貧血予防に効果的な食べ物
貧血の中でも、特に鉄欠乏性貧血は頻度が高いことが知られています。
ここからは、鉄分不足による貧血を予防するために、1日にどのくらい鉄分を摂るとよいのか、その目安量と、鉄分を含む貧血予防におすすめの食べ物を紹介します。
鉄分の1日の摂取基準量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、1日あたりの鉄の食事摂取量は、以下の量が推奨されています5。
| 18〜74歳の男性 | 7.0〜7.5mg |
| 18〜74歳の女性(月経なし) | 6.0mg |
| 18〜64歳の女性(月経あり) | 10〜10.5mg |
文献5を参考に作成
一方で、日本人が食品から摂っている鉄分量は、令和元年の国民健康・栄養調査によると、1日平均7.6mgでした5。このデータからは、特に月経のある女性の場合、鉄分は不足しがちであることがわかるかと思います。
そのため、特に女性の鉄欠乏性貧血を予防するためには、鉄分を意識した、バランスのよい食生活を心がけることが大切です6。
貧血予防・鉄分補給におすすめの食べ物
日常的な食生活で貧血を予防するためには、以下のような食べ物を積極的にとるようにするとよいでしょう5,7。
- ・鉄を多く含む食品(ヘム鉄中心):豚レバー、鶏レバー、牛ヒレ肉、豚もも肉、鶏もも肉、牡蠣、あさり、さば、まぐろなどの魚介類
- ・鉄を多く含む食品(非ヘム鉄中心):ほうれんそう、小松菜、大豆、納豆、凍り豆腐、切り干し大根、ひじきなど
ヘム鉄は、非ヘム鉄よりも身体に吸収されやすい特徴があります。
非ヘム鉄の吸収率はヘム鉄よりも低いですが、ビタミンCを多く含む食品を一緒にとると吸収率が高まります。
ビタミンCが多く含まれる果物や野菜には、これらのようなものがあります。
- ・アセロラ
・レモン
・ブロッコリー
・黄色パプリカ
・カボチャなど
ぜひ、非ヘム鉄が豊富な食材と一緒にとるようにしましょう7。
一方、鉄分はカフェイン飲料などを一緒にとると吸収が妨げられてしまうことには注意しましょう。そこで、カフェインを多く含むようなコーヒーや紅茶、緑茶などは食事前後1〜2時間は避けた方がよいでしょう6。
亜鉛やビタミンB12、葉酸などの栄養素も貧血予防のためには重要です。
亜鉛を多く含む食品としては、以下のようなものがあります8。
- ・魚介類、特に牡蠣(かき)やうなぎ
・豚レバー
・大豆食品(きなこなど)
・野菜類(カボチャなど)
ビタミンB12は、魚介類や肉類、卵類、乳類といった動物性食品、さらに藻類(のりやあおさなど)に多く含まれています9。
葉酸は、藻類や肉類、野菜類、卵類、乳類、豆類などに多く含まれています10。
すべてをまんべんなくとることは難しいかもしれません。まずは、肉や魚、卵など、たんぱく質を積極的にとることを心がけてみるとよいでしょう6。
貧血予防には手軽なコンビニ食品やサプリメントも活用しよう
日頃の食事だけでは、十分な鉄分を摂取することが難しい場合もあるでしょう。
ここでは、手軽に摂れるコンビニ食品や、サプリメントについてご紹介します。
コンビニで変える鉄分豊富な食べ物・飲み物
働いている人は食生活が偏りがち。食事で鉄分を摂取するのが難しいときは、利用しやすいコンビニを活用するのもひとつ。
お弁当やお惣菜、手軽に食べられるおやつを買うときには、以下のような鉄分を含む食材で食べ物や飲み物を選んでみましょう。
- ・アサリご飯
・レバニラ炒め
・さば缶・サバの塩焼き
・切り干し大根
・ほうれん草のおひたし
・ひじきの煮物
・枝豆
・ココア
・豆乳
最近は、鉄分を含むお菓子や健康食品も豊富です。小腹が空いたら活用してみましょう。
- ・ドライフルーツ・ナッツ
・チョコレート
・鉄分配合のお菓子(グミ、ウエハース)
・鉄分配合ドリンク(ゼリー、栄養ドリンク)
ただし、コンビニ食品やお菓子は補助的なもの。塩分やカロリーが高いものもあるので、できる限り、日頃の食事から鉄分を摂取できるとよいですね。
食事で鉄分が不足するときはサプリメントも
食事だけでは十分に鉄分が摂れない場合には、鉄分が含まれるサプリメントも選択肢のひとつです11。
サプリメントを利用する場合、過剰に飲んでしまうと、胃の不調や便秘、吐き気、腹痛、嘔吐、下痢などの副作用が現れることもあります。適切な用量を守って飲むようにしましょう。
また、薬の服用をしている場合、サプリメントの飲み合わせに注意する必要があるので、医師・薬剤師に相談してください。
貧血が改善されないときは医療機関を受診しよう
食べ物やサプリメントを活用しても貧血が改善しない場合には、医療機関での診察、治療を受けるようにしましょう。
医療機関を受診して診察を受ける
健康診断などで貧血を指摘され、食べ物などの見直しを行っても改善がない場合、あるいはすでに何らかの症状がある場合には、放置しないことが大切です。
特に女性の場合、月経血が多い(例:ナプキンを1時間に2回ほど交換しないといけないなど)の際には婦人科での診察を受けた方がよいと考えられます12。
また、黒っぽい便(黒色便)が出るなどの症状がみられる場合には、胃や腸などの消化器からの出血の可能性もあるため、消化器内科の受診をおすすめします。
これらの症状がない場合でも、まずは内科、もしくはかかりつけ医を受診するようにするとよいでしょう。
鉄剤や注射などの治療を受ける
鉄欠乏性貧血と診断された場合の治療としては、鉄剤による鉄分の補充が行われます13。
鉄剤には内服薬と注射薬がありますが、まずは口から飲む経口薬が選択される場合が多いでしょう。身体に十分に鉄が補充されるまで、数週間から数ヶ月間の内服が必要となるケースも多いので、きちんと飲み切るようにしましょう。
一方、鉄剤の内服によって吐き気や便秘などの副作用が現れることもあります。
副作用に耐えられない場合や、あるいは内服薬では十分な改善効果がみられない場合、静脈内投与、つまり注射での鉄剤投与が検討されます13。
まとめ
今回の記事では、貧血の概要や予防、改善に役立つ食べ物について解説しました。
まずは、きちんと3食、鉄分やたんぱく質を意識した食事をとるようにしてみてくださいね。栄養素を食事で摂ることが難しい場合には、用法用量を守ったサプリメントの服用も検討しましょう。



