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脳とエストロゲンの関係|役割・分泌メカニズム、増やし方や過剰分泌のリスクを解説
更新日:2026-01-29

脳とエストロゲンの関係|役割・分泌メカニズム、増やし方や過剰分泌のリスクを解説

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「女性ホルモン」としても知られるエストロゲン。
実は、女性の生理や妊娠だけでなく、脳機能やメンタル、骨密度の維持など身体のさまざまな部分に働きかける大切なホルモンです。

本記事では、エストロゲンの役割と分泌のメカニズム、バランスが崩れた時の影響と分泌を整えるためのポイントをご紹介します。エストロゲンの働きを知りたい、ホルモンバランスを整えたい方はぜひご覧ください。

エストロゲンとは

エストロゲンは、身体の女性化や二次性徴に関わるステロイドホルモンです。

エストロン、17β-エストラジオール、エストリオールの3種類の総称で、エストラジオールが最も活発に働きます。
主に卵巣で作られますが、副腎や脂肪組織、男性では精巣でも作られています1

エストロゲンは、卵子を成熟させて排卵を促す、子宮内膜を厚くして妊娠に備える、女性らしい体つきにする働きのほか、骨密度を強く、血管を柔軟に保ったり、コレステロールを減らしたり、認知機能を維持するなど、さまざまな働きを持つホルモンです2

エストロゲン分泌のメカニズム

エストロゲンは、主に女性の卵巣から分泌されるホルモンです。

脳の視床下部がGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌し、下垂体でFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)が産生されます。

FSHが卵巣を刺激すると、卵胞が育ってエストロゲンが分泌されるのです。

月経周期によってエストロゲンの分泌量が変動し、排卵前にピークに達するようになっています。

通常、エストロゲンが多すぎると「負のフィードバック」が働き、脳に信号を送って分泌を抑え、バランスを取ります。しかし、排卵のタイミングでは逆に「正のフィードバック」が働き、エストロゲンが脳を強く刺激してLHを急激に増やし、排卵を促します2

エストロゲンは、女性の月経周期と連動して分泌量が変化するほか、妊娠や出産のタイミング、年齢の変化でも分泌量が変化します。
思春期には急激に増加することで月経が起こり、年齢を重ね45〜55歳頃の更年期になると卵巣に残っている卵胞の減少にともない分泌量が低下し閉経を迎えます。
妊娠中は胎盤の形成とともに分泌量が増え妊娠の維持に働き、出産後は胎盤の排出に伴い分泌量は急に減少します2

エストロゲンは女性の身体、妊娠・出産に大きく影響を及ぼすホルモンなのです。

エストロゲンの主な役割

エストロゲンには、女性特有の妊娠・出産に関わるものだけでなく、さまざまな働きがあります。
ここでは、エストロゲンの主な役割をご紹介します。

妊娠・出産に向けた身体づくり

エストロゲンは、思春期を迎えると分泌が活発になります。

二次性徴を促して女性らしい身体つきにする、妊娠・出産にむけて子宮の内側を厚くする、乳房を発達させて乳汁を分泌する準備をする、などの妊娠・出産に適した体づくりの準備をします。

また、妊娠すると男性ホルモンのアンドロゲンをエストロゲンに変える「アロマターゼ」と呼ばれる酵素によって卵巣や胎盤からエストロゲンの分泌が増え3、妊娠の維持・胎児の成長を支えます。

骨密度の維持

エストロゲンは古くなった骨を吸収する破骨細胞の働きを抑制し、新しい骨を作る骨芽細胞の働きを促進して、骨密度を維持する働きを持ちます。

そのため閉経後にエストロゲンの分泌が減ると、破骨細胞の骨吸収が進み、骨がもろくなり、骨折しやすくなってしまいます4

心血管系の保護・コレステロールの減少作用

エストロゲンには心血管系の保護作用が認められています。

主に閉経後の女性の脂質代謝に影響し、善玉コレステロール(HDL)を増やし、悪玉コレステロール(LDL)を減らして血中の脂質異常を改善し、動脈硬化を防ぎます。
また、血管内皮を保護して血流を良くする作用があると報告されています2

肌の健康の維持

エストロゲンは、健康な肌の維持にも役立つホルモンです。
線維芽細胞のコラーゲン合成を活性化し、皮膚の深い部分にある真皮のハリやうるおいを維持します。

また、皮脂腺に作用して肌の脂質バランスを整え、抗酸化作用によって肌が受ける紫外線による酸化ストレスやダメージを軽減する働きを持ちます5

神経保護・認知機能の維持

エストロゲンには、認知機能を維持する働きがある可能性があります。
エストロゲンに関する研究では、認知症の中でも多いアルツハイマー病における認知機能の低下を抑える働き2や、アルツハイマー病の発症リスクを低下させる7といった報告があります。

また、脳の記憶に関わる海馬や考えを整理する前頭前野に働きかけて新しいシナプス(神経細胞の接合部位)やスピノジェネシス(神経細胞の突起)の形成、情報の伝達効率の向上、記憶力や学習能力の維持にも関わっている可能性が示唆されています6

他にも、脳の神経細胞を成長させて保護するBDNF(脳由来神経栄養因子)が作られる量を増やすことで、間接的にも認知機能の維持に関わっているホルモンです7

ストレス緩和

エストロゲンはストレス緩和に関わるホルモンとして多くの研究があります。
研究では、ストレスに関わる脳の経路が活発になるのを抑え、「ストレスホルモン」とも呼ばれるコルチゾールの過剰分泌を防ぐ働きが示唆されました。

また、セロトニンやドーパミンなどの「幸せホルモン」と呼ばれるホルモンの分泌を増やし、気持ちを安定させてストレスの緩和に重要な役割を果たすと考えられています8

エストロゲンが不足・分泌量が減ったときの影響と原因

年齢やホルモンバランスの異常などでエストロゲンが不足すると、身体のさまざまな不調として現れることがあります。代表的なものを見ていきましょう。

ホットフラッシュやのぼせ

エストロゲンが不足すると自律神経が乱れ、突然顔や身体が熱くなって汗が噴き出す「ホットフラッシュ」と呼ばれる現象が起こることがあります。

これは、閉経が近づくと卵巣機能の低下によってエストロゲンの分泌が影響し、体温調節が不安定になるためと推測されています9
いわゆる「更年期障害」の症状のひとつです。

精神的な不調

エストロゲンの分泌が低下すると脳内のセロトニンが抑制され、特に更年期にはイライラ・不安・うつ気分・不眠・物忘れなどの精神的な不調が現れることがあります。

エストロゲンはセロトニンを作る酵素や運ぶ仕組みを支えていますが、低下するとこれらが弱まり、セロトニンの量や働きが落ちるためです10

心血管疾患のリスク

エストロゲン分泌が減少すると血管内皮機能が低下し、コレステロールが血管壁にたまりやすくなって動脈硬化が進みます。

その結果、心筋梗塞や脳卒中などの脳血管疾患のリスクが増加します11。特にエストロゲンの分泌量が低下する閉経後の女性はコレステロール値の変化には注意しましょう。

体重増加・肥満

エストロゲンの分泌が減ると、体重増加・肥満が進み、肥満リスクが高くなります。エストロゲンが脂肪組織の生理を変化させ、皮下脂肪を増やすためです12

閉経後の方や生理前に「体重が増える」と悩む方が出てくるのには、エストロゲンの分泌量が関わっているのです。

骨粗鬆症や皮膚疾患などの身体的な症状

エストロゲンが不足すると骨密度が低下し、骨粗鬆症による骨折リスクが高まります2

また、腟の上皮が萎縮して乾燥や性交痛が生じたり、皮膚ではコラーゲン減少による肌荒れ・乾燥がみられたりします。その他にも、慢性疲労や頭痛など身体的な症状が生じることがあります13

このように、エストロゲンが不足すると婦人科系の不調だけでなく、心身のさまざまな部位に影響が生じます。

エストロゲンが過剰に分泌された場合のリスク・悪影響

エストロゲンは、多すぎても身体に悪影響を与えることがあります。

生理不順

エストロゲンが過剰分泌されると、排卵が抑制されて無月経や過多月経が生じ、PMS(生理前症候群)の悪化や不妊の原因になることがあります。

これは、女性ホルモンのプロゲステロンとの分泌のバランスが悪くなり、子宮内膜が不安定になるためだと考えられています14

婦人科疾患への影響 

エストロゲンが過剰に分泌されると、子宮内膜症や子宮筋腫など、婦人科系の疾患が生じたり悪化するリスクがあります。

エストロゲンが多く分泌されると、子宮内膜症で発生した子宮以外に発生した内膜が異常に増殖し、強い痛みや大量出血、不妊の原因になります15
また、子宮筋腫もエストロゲンの分泌が増えると肥大し、過多月経や周囲の臓器を圧迫するといった症状につながります15,16

その他、エストロゲンが過剰になるとがん細胞の増殖や子宮内膜の異常増殖を誘発し17、子宮体がんを発症するリスクが高まるとされています。

エストロゲンのホルモンバランスを整えるポイント

エストロゲンの分泌のバランスを整えるには、生活習慣を整えることが大切です。
具体的なポイントを紹介しますので、ぜひ試してみてください。

ストレス解消を心がける

エストロゲン分泌を安定させるには、日常のストレスを意識的に減らすことも大切です。
強いストレスを受け続けると、ストレスホルモンのコルチゾールが増えてエストロゲンの産生が抑制されます21

エストロゲン自体にもストレス反応を和らげ、精神的な安定を促す役割があります。エストロゲンの分泌量が安定すると精神的に安定し、良いサイクルが生まれると考えられています8

深呼吸や散歩、趣味の時間を意識して日常的に取り入れ、ストレスの解消を心がけましょう。

医療機関の受診を検討する

ホルモンバランスの変化は、ストレスや睡眠など日常生活の変化でも生じます。
いつもと違う、不調が続く場合は、医療機関で相談しましょう。
検査でエストロゲン分泌の状態を把握して、必要に応じて治療を検討できます。女性特有の症状は、婦人科・産婦人科の受診がスムーズです。

エストロゲンに関するよくある疑問

エストロゲンに関してよくある質問を、Q&A形式でまとめました。

エストロゲンの別名は?

エストロゲンは、「女性ホルモン」とも呼ばれます。
卵胞の発育に伴って分泌されるので「卵胞ホルモン」とも呼ばれることがありますが、副腎皮質、脂肪組織、胎盤、精巣など卵胞以外からも分泌されることが明らかになっています1

大豆イソフラボンはエストロゲンの代わりになる?

豆腐、納豆、味噌などの大豆食品に含まれている大豆イソフラボンは、エストロゲンに化学構造が似ていることから、植物性エストロゲンと呼ばれサプリメントも販売されています。

大豆イソフラボンは、動物実験の結果から、人においても骨粗鬆症や乳がんなどの予防効果が期待されていますが、まだ有効性や安全性は確立されていません19
エストロゲンの代わりとしての効果を過度に期待せず、バランスのよい食生活を心がけ、サプリメントは食事内容も考慮して取り入れることが大切です。

大豆イソフラボンの摂取目安は、日本では上限値が1日あたり70〜75mgとされており、特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日の上乗せ摂取量の上限値は30mgとされています19

エストロゲンの分泌量が多い男性は女性化するって本当?

エストロゲンの分泌量が多い男性は、ホルモンバランスの乱れによって胸が女性のように膨らむ女性化乳房が起こることがあります22
原因として、ホルモンバランスが変化する生理的なものと、遺伝性疾患や腫瘍などの病的なもの、薬の影響などがあります。
エストロゲン過剰症の場合、女性化乳房のほか、発症時期によっては低身長を伴うこともあります23

低用量ピルとエストロゲンの関係は?

低用量ピルは、エストロゲンと似た働きをする合成ホルモンを少量含んでいます。
低用量ピルを毎日服用すると、体内のエストロゲンレベルを安定させ、生理周期によるホルモンの変動を抑える効果があります。主に、避妊、月経痛やPMSの症状の緩和、ホルモンバランスを整える目的で処方される薬です。

従来の中容量ピルより含まれているエストロゲンの量が少なく、副作用が起きにくいのが特徴です。体質に合わない方もいるため、医師に相談しながら使いましょう24

まとめ

エストロゲンは女性ホルモンとして知られており、主に卵巣から分泌されます。性ホルモンでありながら、脳機能の維持や骨・心血管の健康保持、ストレス緩和など、さまざまな役割を果たしています。

月経周期や加齢で分泌が変動しやすいですが、少なすぎても多すぎても身体の不調を招きます。分泌を安定させるために、大豆製品の摂取、十分な睡眠、適度な運動、ストレスの解消などを意識してみてください。
毎日の生活習慣に、できることを取り入れてみましょう。

参考文献


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2, 内田 さえ:エストロゲンの機能とストレス~生涯を通じて健康を維持するために~. 国際抗老化再生医療学会雑誌. 2019;2:11-18.
3, Carole R Mendelson, et al:Mechanisms in the regulation of aromatase in developing ovary and placenta. J Steroid Biochem Mol Biol. 2007;106(1-5):62-70.
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