私たちは時間の感覚を意識せずにとらえながら生活をしていますが、認知機能が低下することなどにより、「今、何時かわからない」というように時間感覚が揺らいでしまうことがあります。
私たちの脳は時間をどう把握している?
情報の種類によって脳の処理を行う場所が決まっています。例えば、目から得た情報を処理するのは視覚野、耳から得た情報を処理するのは聴覚野です。
しかし、時間の感覚は脳の決まった部分で処理されているわけではありません。脳の多くの部分が複合的に関わることで時間を認識しています1。
体内時計(生物時計)のはなし
ヒトは進化の過程で、恒常性を保つプロセスや、より短い時間スケールでの行動反応を司る2つの体内時計(生物時計)を獲得してきました。
1つは約24時間周期の体内時計(生物時計)で、サーカディアンリズムといいます2。脳の視床下部というところが関わっていて、生活リズムに影響を与える時計です。
もう1つの時計は、インターバルタイミングという短い時間を測るストップウォッチのような時計で、脳のさまざまな部分が複合的に関わっています2。「あと5分で家を出る」という場面では、時計を見なくても大体5分くらいの感覚がわかりますよね。
このように、われわれは脳の複数の部位が複雑に関わって働くことで時間感覚を得ています。
時間感覚の乱れと上手に付き合うコツ
認知機能の低下などによって時間感覚の乱れがみられる方もいますが、ご本人の意思や努力で解決することは難しいものです。そのような場面では、ご本人が無理なく安心して時間を把握できるよう、周囲がサポートしていきましょう。
日々の生活のなかで手軽に始められる、時間感覚の乱れと上手に付き合うコツを3つご紹介します。
スマートフォンのアラーム機能をフル活用する
食事の時間や服薬時間、お風呂の時間などにアラームをセットすることで、生活習慣のタイミングを維持できます⁶。曜日設定を活用すれば、決められた曜日のゴミ出しをサポートすることもできます。
文字盤が大きな見やすい時計を部屋ごとに設置する
すぐに時間を確認できる環境を作るのも1つのコツです。普段過ごすことが多い寝室やリビングだけでなく、料理の時間を確認しやすいキッチン、外出前に時間を確認しやすい玄関、作業に熱中しがちな書斎など、部屋ごとに置くのがよいでしょう。
人によって、アナログとデジタルのどちらがわかりやすいかが異なるので、ご本人が見やすいものを選んで設置しましょう。時計を設置しても、見えにくいと意味がないので、文字盤は大きいほうがよいでしょう。
毎日の生活リズムを整える
生活リズムを整えて、昼夜逆転を防ぎましょう。アラーム機能を利用して、寝る時間と起きる時間を一定にすることで、規則正しい生活を送るサポートになります。
昼寝もタイマーを活用して、長時間にならないようにしましょう。日中に太陽の光を浴びるようにしたり、活動時間を増やすのもよいでしょう7。
まとめ
時間の感覚は、脳の決まった部分で処理されているわけではなく、脳の多くの部分が複合的に関わることで時間を認識しています。
認知機能の低下などにより、時間感覚がわからなくなってしまうと、日常生活にさまざまな困りごとができてしまいます。もし、そのような場面があれば、スマートフォンのアラーム機能や時計の設置、生活リズムを整えるなどの工夫で、サポートを行うようにしましょう。