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脳トレは脳を活性化させる?良い影響をもたらすとされている脳トレを紹介します
更新日:2025-07-31

脳トレは脳を活性化させる?良い影響をもたらすとされている脳トレを紹介します

脳トレは脳を活性化させる?良い影響をもたらすとされている脳トレを紹介します

テレビや雑誌で「脳トレ」という言葉を目にすることがありますが、「本当に脳に良いのだろうか?」「どんなことをすればいいの?」と疑問に思う方は多いかもしれません。脳トレは実際に脳にどのような効果をもたらすのでしょうか。

この記事では、医学的な研究に基づいた脳トレの効果についてわかりやすく解説し、今日から実践できる方法をご紹介します。

脳トレはドリルやゲームのこと?脳トレの定義とは

「脳トレ」という言葉は、幅広い内容を指しています。狭い意味では特定のゲームやドリルを指しますが、広い意味では日常のさまざまな知的活動を含んでいます。

まずは脳トレがどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。

脳トレは脳の機能を向上させるトレーニング全般のこと

「脳トレ」とは、簡単にいうと記憶力や注意力など脳の働きを良くするための頭の体操のことです。学術的には「認知トレーニング」と呼ばれることが多く1、脳が持つ変化する力(可塑性)を活かしてその働きを維持するという考えに基づいています。

狭い意味での脳トレ

狭い意味での脳トレは、パソコンや紙の上で行うパズルやクイズなど、特定の課題を繰り返し行うトレーニングのことです。

書店で売っている脳トレドリルや問題集、インターネットサイトの頭の体操などがこれに該当し、テレビゲームやスマートフォンアプリの脳トレもよく知られています。

広い意味での脳トレ

一方、広い意味での脳トレには、脳に刺激を与えるあらゆる活動が含まれます。読書やパズル、楽器の演奏、新しい言語の習得、ダンスやアートなど創造的・身体的な活動も脳トレの1種と考えられます。

加齢した脳にも柔軟性(可塑性)があることを示す証拠がいくつかあり、これらの認知トレーニングなどを通じて、認知機能が促進される可能性があります。

実践!今日からできる脳トレ5選

では、どのような脳トレを行うとよいのでしょうか。研究で脳に良い影響をもたらすことが確認されている脳トレを5つご紹介します。

1.  パズルで頭の回転を良くする

新聞や雑誌のクロスワード、数独、タブレットのパズルゲームなど、順序立てて考える問題は脳にとって良い運動になります。

50代以上の約19,000人を対象に調査した研究では、数字パズルを頻繁に解く人は記憶力や注意力、推理力のテストで優秀な成績を示すことがわかりました2

2. 記憶トレーニングで覚える力をつける

トランプの神経衰弱や買い物リストを暗記するといった記憶トレーニングは、記憶力や一時的に情報を保持する力を鍛えるのに良い影響をもたらすかもしれません。

実際に、「n-back課題」という記憶課題を用いた研究では、50〜65歳の57名が週4回、8週間課題を続けたところ、記憶力テストの成績が向上したという結果が示されました3

3. テーブルゲームで考える力を鍛える 

囲碁、将棋、チェス、トランプ、麻雀といった、アナログのテーブルゲームは頭をよく使います。相手の次の手を予想しながら自分の戦略を考えるのが脳に良い刺激となります。

このようなテーブルゲームをよく行う方は、70代になっても全般的な認知機能の低下が少なく、特に記憶力の低下が抑制されるという傾向がみられました4

 4. スマートフォンのアプリで手軽に脳を鍛える

 最近はスマートフォンで楽しめる脳トレアプリが多く登場しています。計算、図形パズル、言葉遊びなど幅広いジャンルの問題を扱うアプリがあり、通勤や移動の合間といった短時間でも効果的に脳トレを行えます。

オンラインで1日たった3分の課題を6週間続けた結果、注意力・記憶力・思考力が向上したという6,544名が参加した研究があり5、スマートフォンで脳トレを毎日継続することで、認知機能に良い影響をもたらす可能性があるかもしれません。

5. 身体を動かすことで脳を活性化する

身体を動かすことは心や身体の健康を改善するだけではなく、脳の健康にもつながります。

実際に、もの忘れが気になる中高年者2,565名が太極拳、ダンス、気功などの運動を週3〜6回、1回30〜90分、8〜36週間続けたところ、認知機能テストの成績が改善したという結果が出ており、認知機能や抑うつ状態、バランス機能の向上に加えて、アミロイドβやタウ蛋白蓄積の程度の改善も期待できます6

脳トレは何歳からスタートすべき?おすすめの開始時期

脳トレは「思い立ったときが始め時」です。実際に、若年者から高齢者まで幅広い年代で認知機能の向上効果が報告されています7

ただ、そのなかでも中年期(40~65歳)は脳トレを始めるのに特に適した時期7である可能性が報告されています。中年期、特に更年期の女性は加齢やホルモンの変化によって脳の可塑性が変動する時期のため、脳への刺激を増やすことで認知機能を維持、改善する効果が期待できます7

脳トレの推奨頻度と取り組む時間について

脳トレが身体にもたらす良い変化や、脳トレの種類、何歳から始めたら良いかなどを知って、脳トレを始めてみたいと思っていませんか?

実際に始めるとなると、週に何回くらい、どのくらいの時間を確保したらよいのかが気になるはずです。脳トレを効率よく継続するための推奨頻度や取り組み時間をご紹介します。

脳トレの推奨頻度は?

週に複数回の頻度で定期的に脳トレを実施することが効果的とされています。複数の研究をまとめて分析した結果では、週3回以上・8週間以上の脳トレを行ったグループで、脳機能の向上が明らかに大きかったことが示されています8

週3回以上を目標に、休息日をはさみながら継続するとよいでしょう。

脳トレの取り組む時間は?

1回あたりの脳トレ時間について明確な決まりはありませんが、多くの研究では1回につき10〜60分程度で行われています7〜10

具体的には1日あたり30分前後の課題を行うケースが一般的で、これを数カ月続けることで効果が積み重なると考えられますが、前述の通り、内容によっては1日わずか3分程度のごく短い時間でも毎日続けることによって良い効果が得られることが示されています5

逆脳トレ?機能を低下させるNG習慣とは

脳トレの効果を考える際、日常生活の悪い習慣が脳の働きに与えるマイナスの影響も知っておくと良いでしょう。

次のような習慣は認知症やMCI(軽度認知障害)のリスクを高めるとされ、脳の健康に逆効果をもたらす可能性があるので、該当する場合は改善を検討しましょう。

運動不足

運動は、高血圧の軽減や一酸化窒素の増加などを通じて、脳の可塑性の向上や神経炎症を抑制させ、認知機能改善につながる可能性がある11と言われています。

身体を動かさず、座りがちな生活は脳への血流不足や慢性炎症につながり、認知症になりやすくなるかもしれません。加齢による脳の機能低下を遅らせるためにも、定期的な有酸素運動などを心がけると良いでしょう。

喫煙

長年の喫煙は脳の血管に悪影響を与え、アルツハイマー型認知症の発症リスクも増加させることが報告されています。大規模研究では、喫煙者は非喫煙者に比べ記憶の低下が明らかに早いペースで進行しました12。認知症に備える観点からも禁煙を検討しましょう。

過度の飲酒

大量飲酒やアルコール依存は脳萎縮や認知機能障害を引き起こす可能性もあり、週あたりのアルコール摂取量が多い人ほど認知症になりやすいことが報告されています13

自らの飲酒の習慣を振り返って気になる方は、禁酒するか適度な摂取量に調整しましょう。

社会的孤立

定期的な他人とのつながりが乏しい高齢者は、豊富な交流がある人に比べ認知症になりやすいとされています11。友人と会話したり一緒に活動したりすることは脳への刺激になるだけでなく、ストレスを和らげ気持ちを安定させることにもつながり、結果的に脳の働きを維持することにつながります。

睡眠不足や睡眠の質の低下

睡眠時間は短すぎても長すぎても脳の働きに悪影響を与えます。6時間未満の短い睡眠が続くと記憶力や判断力の低下が見られ、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの脳内蓄積増加とも関係する14という報告があります。

一方で、9時間以上の過度な睡眠も脳の働きの低下と関係するとの研究結果もあります15。適度な睡眠時間には注意が必要です。

まとめ

脳トレは医学的研究によって、記憶力をはじめとする認知機能の向上効果が確認されています。特にパズル、記憶トレーニング、テーブルゲーム、スマホアプリ、身体を動かす趣味などは、手軽で継続もしやすいでしょう。

まずは1つでも構いません。通勤時間にスマホの脳トレアプリを試す、家族や友人とトランプや将棋を楽しむ、近所のスポーツ教室に参加するなど、興味のあることから始めてみませんか。何歳からでも脳トレを行うことができますので、気になったものからトライしてみましょう。

(参考文献)

1, Park DC,et al:The aging mind: neuroplasticity in response to cognitive training. Dialogues Clin Neurosci. 2013;15(1):109-19.

2,  Brooker H, et al:The relationship between the frequency of number-puzzle use and baseline cognitive function in a large online sample of adults aged 50 and over. Int J Geriatr Psychiatry. 2019;34(7):932-40.

3,  Emch M, et al:Neural and Behavioral Effects of an Adaptive Online Verbal Working Memory Training in Healthy Middle-Aged Adults. Front Aging Neurosci. 2019;11:300.

4,  Altschul DM, et.al. Playing Analog Games Is Associated With Reduced Declines in Cognitive Function: A 68-Year Longitudinal Cohort Study. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci. 2020;75(3, :474-82.

5,  Corbett A, et al:Impact of Short-Term Computerized Cognitive Training on Cognition in Older Adults With and Without Genetic Risk of Alzheimer's Disease: Outcomes From the START Randomized Controlled Trial. J Am Med Dir Assoc. 2024;25(5):860-5.

6,  Cai H, et al:Effects of mind-body exercise on cognitive performance in middle-aged and older adults with mild cognitive impairment: A meta-analysis study. Medicine (Baltimore). 2023;102(34):e34905.

7,  Zhu C, et al:Cognitive Training During Midlife: A Systematic Review and Meta-Analysis. Neuropsychol Rev. 2024. 

8,  Chiu HL, et al:The effect of cognitive-based training for the healthy older people: A meta-analysis of randomized controlled trials. PLoS One. 2017;12(5):e0176742.

9,  Rebok GW, et al:Ten-year effects of the advanced cognitive training for independent and vital elderly cognitive training trial on cognition and everyday functioning in older adults. J Am Geriatr Soc. 2014;62(1):16-24.

10,  Lampit A, et al:Computerized cognitive training in cognitively healthy older adults: a systematic review and meta-analysis of effect modifiers. PLoS Med. 2014;11(11):e1001756.

11,  Livingston G, et al:Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404(10452):572-628.

12,  Zhong G, et al:Smoking is associated with an increased risk of dementia: a meta-analysis of prospective cohort studies with investigation of potential effect modifiers. PLoS One. 2015;10(3):e0118333.

13,  Kivimäki M, et al:Association of Alcohol-Induced Loss of Consciousness and Overall Alcohol Consumption With Risk for Dementia. JAMA Netw Open. 2020;3(9):e2016084.

14,  Winer JR, et al:Association of Short and Long Sleep Duration With Amyloid-β Burden and Cognition in Aging. JAMA Neurol. 2021;78(10):1187-96.

15,  van Oostrom SH, et al:Long sleep duration is associated with lower cognitive function among middle-age adults - the Doetinchem Cohort Study. Sleep Med. 2018;41:78-85.

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