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医師が教える|全身の血行を良くするストレッチ法とは?血行不良改善で健やかライフを!
更新日:2025-12-05

医師が教える|全身の血行を良くするストレッチ法とは?血行不良改善で健やかライフを!

ピンクの半袖の女性が腕と肩をほぐしている

「最近、顔色が冴えない」「手足が冷えてつらい」と感じることはありませんか?それは、身体の血行が悪くなっているサインかもしれません。

血液は酸素や栄養を全身に届ける大切な役割を担っており、血行不良は冷えやむくみ、肩こり、肌荒れなど、身体の様々な不調につながります。

この記事では、血行が悪くなる原因やそれによって起こる影響を解説するとともに、全身の血流を促すおすすめのストレッチ法や、日常生活で意識したい習慣・避けたい行動についてご紹介します。

血液の巡りを整えて、冷え知らずのいきいきとした毎日を目指しましょう。

血行が悪くなる理由は?原因と身体に及ぼす悪影響

まず、血行が悪くなる原因と、血行不良が身体に及ぼす悪影響について確認しましょう。

血行が悪くなる理由

体内の血流を悪くする理由には、次のようなものがあります。

  • ・運動不足
    ・食生活の乱れ・水分不足
    ・喫煙

運動不足

運動不足や長時間同じ姿勢で過ごすことは血行不良の大きな原因です。

筋肉を使わないと、筋肉がポンプのように血液を心臓に送り戻す働きが低下し、全身の血液循環が滞ってしまいます。

食生活の乱れ・水分不足

そのほか、水分不足や偏った食生活も血行を悪くします。体内の水分が不足すると血液が濃くなって(ドロドロになって)流れにくくなり、血行が悪くなります。

また、栄養バランスの乱れでコレステロールや中性脂肪が増えると動脈硬化を招きやすくなります。血管の弾力性の低下や血管の内部が狭くなってしまった結果、血流が低下します。

喫煙

喫煙も大敵で、ニコチンにより急激に血管が収縮して血行が悪くなります。

さらに、過度なストレスも交感神経を緊張させ、血管の拡張や体温調節を妨げるため身体を冷やしてしまいます。

血行不良が身体に及ぼす悪影響

血行が悪くなると、全身に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなります。

その結果、手足の冷え、肩こり、腰痛、疲労感といった不調が現れやすくなります。血液の流れが悪い部位では老廃物が溜まり、足のむくみなども起こりがちです。

さらに血行不良を放置すると、血液が滞ったところに血栓(血のかたまり)ができてしまう恐れがあり、エコノミークラス症候群(肺塞栓症)など、命に関わる重篤な状態を引き起こす場合があります。

また、動脈硬化により血行不良に陥っている状態が続くと、手足のしびれなどがみられる末梢動脈疾患に至る可能性があります。

全身の血行を改善するメリット

血行を良くすることは、健康や美容にさまざまなメリットをもたらします。ここでは全身の血流改善によって期待できる主な効果を3つ紹介します。

冷えの解消

血行改善は身体の冷え対策に有効です。血流が良くなると温かい血液が末端まで行き渡り、手足の冷えが和らぎます。

全身の血行を良くするためには、適度な運動やストレッチがおすすめです。運動によって血流が良くなるだけでなく、筋肉量が増えることで身体全体の熱の産生量が増え、冷えの解消につながります。

日頃から身体を動かし筋肉量を維持することで熱が生まれ、身体が冷えにくくなることが知られています。実際に身体は、周囲の気温が低いと骨格筋を震わせて熱を発生させますが、それ以外にも、筋肉そのものの代謝や食事誘導性に熱を産生させることが報告1されています。

冷え性に悩んでいる人は、運動やストレッチを始めてみるのも良いでしょう。

肌荒れやくすみ肌の解消

お肌の調子も血行と深い関わりがあります。血液循環が良いと皮膚の隅々まで酸素と栄養が行き渡り、老廃物の排出も促されるため、肌の新陳代謝が活発になります。

その結果、肌の乾燥やくすみ(血行不良による肌のくすんだ状態)が改善し、健康的な肌につながります。

運動習慣のある人は皮膚の水分保持量が高く、運動習慣が肌の乾燥を防ぐ可能性があるとの研究結果も報告されています。また、運動によって増加した血流が皮膚に必要な栄養を届け、肌をよりみずみずしく健康に保つことにも役立ちます2

高血圧や動脈硬化のリスク低減

血行を促進する生活習慣、例えばウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行うことで、高血圧や動脈硬化の予防にもつながります。

動脈硬化の第一段階である血管内皮機能障害3は、有酸素運動によって改善され、組織への血流量を調整することが報告されています4

自宅でできる!全身の血行を良くするストレッチ法

毎日の生活にストレッチを取り入れることで、全身の血行を効果的に促進することができます。

ストレッチは自宅で手軽に行える運動で、筋肉や血管を適度に刺激し、ストレッチ後には血流が良くなります。

ここでは、初心者の方からある程度運動習慣のある方まで取り組みやすく、全身の血流アップに役立つストレッチを3つご紹介します。朝起きたときや仕事の合間、入浴後などにぜひ試してみてください。

ふくらはぎのストレッチ(カーフストレッチ)

全身の血行を良くするためには、まず最初にふくらはぎ(カーフ)のストレッチにチャレンジしましょう。

椅子の背もたれに手をついて片脚を後ろに引き、前に出ている膝を曲げることで、後ろ側のふくらはぎを伸ばします。後ろ脚のかかとを床につけたまま30秒間キープしましょう7

ふくらはぎは第2の心臓と呼ばれるほど、下半身の血液循環に大きな役割を果たしています。

ふくらはぎの筋肉の収縮には血液を心臓へ戻すポンプ(カーフポンプ)の役割があり、1回のふくらはぎの収縮により約60mL以上の血液が送り出されます5

成人女性の安静時における、心臓が1回で送り出す血液の量が48~82mLという報告6があることを考慮すると、カーフポンプは血行を良くするための大切な役割を担っていると言えます。

このストレッチでふくらはぎ全体が心地良く伸び、筋ポンプ作用が促されて滞りがちな足先への血流が改善します。足の冷えやむくみの解消も期待できます。

肩甲骨ストレッチ(肩まわし)

デスクワークなどで凝り固まりがちな肩周りの血行を促すには、肩甲骨ストレッチが有効です。

肩甲骨が動くように大きく回します。前まわし、うしろまわしをそれぞれ5回程度ずつ行います。余裕があれば手の親指を肩口に置き、曲げた肘で空中に大きく円を描くように行うとさらに肩甲骨の動きがよくなります8

肩甲骨まわりの筋肉がほぐれて血流が改善し、肩こりの解消に役立ちます。胸を開く動きにもなるため呼吸が深くなり、上半身全体の血行促進とリラックス効果も得られます。

太もも裏のストレッチ(ハムストリングストレッチ)

太ももの裏(ハムストリングス)を伸ばすストレッチは、下半身の大きな筋肉をほぐして血行を促すのに効果的です。

椅子に腰掛けて片足を前に出し、30秒かけてお腹から前に倒して、ももうらを伸ばしましょう。
伸ばした足のつま先は立てるようにしましょう9

下半身の血流が良くなり、身体がポカポカと温まります。腰や脚の柔軟性も高まり、立ち座り動作も楽になるでしょう。

ストレッチ以外も!血行不良を改善する生活習慣

血流を良くするにはストレッチ以外にも、日頃の生活習慣を見直すことが大切です。以下のようなポイントに気を付けて、全身の血行をサポートしましょう。

適度な有酸素運動

ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を日常に取り入れましょう。1回30分程度の中高強度(ややきつい)の運動を週に3回以上行うと持久力が高まり10、全身の血行が促進されます。

入浴(湯船につかる)

シャワーで済ませず、できればお湯を張った浴槽に浸かって身体を温めましょう。41℃のお湯に10分浸かると、体温と皮膚血流が増加し、温熱性の血管が拡張がみられたという報告11もあり、全身の血行促進が期待できます。

同じ姿勢を長時間とらない

デスクワークなどで座りっぱなし・立ちっぱなしが続くときは、1時間に一度は席を立って軽く身体を動かす習慣をつけましょう。同じ姿勢を続けると筋肉のポンプ機能が低下して血液を心臓に戻しにくくなります。こまめにストレッチを挟むことで血流を維持し、肩こりや足のむくみも予防できます。

こまめな水分補給

水分が不足すると血液量が減って血がドロドロになり、循環が悪化する恐れがあります。のどが渇く前に意識して水やお茶を飲むようにしましょう。特に夏場の汗をかきやすい時期や、乾燥しやすい冬場は注意が必要です。

バランスの良い食事

血行を良く保つためには、栄養バランスの取れた食生活も重要です。野菜や魚などをしっかり摂ってビタミンやミネラルを補給し、塩分や脂肪分、糖分の過剰摂取を控えましょう。偏った食生活は動脈硬化を招きやすく、結果的に血流が悪くなる原因となります。

血行を悪くするNG生活習慣

反対に、血行を悪くしてしまう生活上のNG習慣にも注意が必要です。次のような行動はできるだけ避け、血流を妨げないようにしましょう。

長時間同じ姿勢

長時間座りっぱなし・寝たきり・立ちっぱなしなど、同じ姿勢を続ける習慣は血行を悪化させます。筋肉が動かないことで血液を押し戻す力が低下し、全身の血液循環が滞ってしまいます。

身体を冷やす

薄着や冷房の効いた部屋で身体を冷やしすぎると、血管が収縮して血流が悪くなります。寒い環境では厚着をする、温かい飲み物を飲むなど、身体を冷やさない工夫を心がけましょう。

喫煙

タバコに含まれるニコチンの作用で血管が急激に収縮し、全身の血行が低下します。喫煙習慣は冷え性を悪化させるほか、動脈硬化も促進して心血管疾患のリスクを高めます。

慢性的なストレス

ストレスによる交感神経の過剰な緊張は血圧の上昇や末梢血管の収縮を招き、結果的に血行不良を引き起こします。

まとめ

ストレッチや有酸素運動、そして毎日の入浴などの無理なく続けられる習慣で全身の血行の促進が期待できます。それにより、冷えの改善、肌のトーンアップ、肩こりや疲れの軽減にもつながり、日々の生活をより充実させることができます。

今日から少しずつできることから始めて、年齢を重ねても美しく健やかに過ごせる毎日を手に入れましょう。

参考文献


1, Mathu P, et al: Skeletal Muscle Thermogenesis and Its Role in Whole Body Energy Metabolism. Diabetes Metab J. 2017;41:327-336.
2, Tertipi N, et al:The effect of exercise on the quality of the skin. JMIR Dermatol. 2024;38(Sup1):67-70.
3, 丸橋達也, 他:血管内皮機能検査Flow-mediated Vasodilation(FMD)の基準値についての検討. 日本臨床生理学会雑誌. 2019;49(3):137-42.
4, 後藤 力, 他:有酸素運動が血管内皮機能へ及ぼす影響.理学療法科学. 2002;17(2):87-91.
5, Recek C:Contribution of the calf pump and foot pump to the return of venous blood from the lower extremity. Journal of Theoretical and Applied Vascular Research. 2017;2(3)131-5.
6, Janis S, et al:Cardiac stroke volume in females and its correlation to blood volume and cardiac dimensions. Frontiers in Physiology. 2022;27:1-14.
7, 公益社団法人日本理学療法士協会:自宅でできる運動療法.[https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook07_09-13_compressed.pdf](最終閲覧日:2025年11月17日)
8, 公益財団法人長寿科学振興財団:肩こりに効く体操とは. 健康長寿ネット.[https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-kenkou/katakori.html](最終閲覧日:2025年11月17日)
9, 日本理学療法士協会:p.6-7 自宅でできる運動療法1.[https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook12_06-07.pdf](最終閲覧日:2025年11月17日)
10, 厚生労働省:全身持久力(最高酸素摂取量)について. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023.[https://www.mhlw.go.jp/content/001195874.pdf](最終閲覧日:2025年11月17日)
11, 田中信行, 他:入浴と運動の健康増進効果の比較─1回入浴と200m走の循環、代謝、末梢血組成の変化─. 日温気物医誌. 2011;74(4):263-272.

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