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記憶力を高める方法はある?医学的検知からコツと低下させるNG行動を解説します
更新日:2025-12-18

記憶力を高める方法はある?医学的検知からコツと低下させるNG行動を解説します

手にのる透き通った黄色い脳の形

日常生活で「さっきまで何をしようとしていたんだっけ?」と記憶が曖昧になった経験はありませんか。
特に40〜60代になると、「最近もの忘れが増えた気がする」と感じる方も多いでしょう。

本記事では記憶力とはなにかを改めて説明し、簡単なセルフチェック方法をご紹介します。

医学的な知見に基づいた記憶力を高める方法や、逆に記憶力を低下させるNG行動を解説します。
日常生活で実践できるコツも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

記憶力とは?

記憶力とは、情報を覚えて保持し、必要なときに思い出す能力を指します。

覚えたことを思い出すとき、脳は新しい情報をインプット(記銘)し、それを一定時間保存(保持)し、後で取り出す(想起)というプロセスを経ています1

この一連の流れの中で、「どれだけ多くの情報を覚えられるか」「どのくらい長く覚えていられるか」「必要なときに素早く思い出せるか」といった総合的な力が記憶力と呼ばれます。

日常生活では、人の名前を覚える、買い物リストを暗記する、昔の出来事を思い出すなど、あらゆる場面で記憶力が働いています。

記憶力・認知機能の簡易チェック方法

「自分の記憶力は大丈夫かな?」「もしかして認知症かもしれない」と感じたときに試せる、簡単なセルフチェックツールがあります。

無料で数分でチェックできるものや、安価にチェックできるものがあるので試してみてくださいね。

自分でできる認知症の気づきチェックリスト

認知症や記憶力で不安になったときに、その場でチェックできるチェックリストです。

  • ・財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがありますか
    ・5分前に聞いた話を思い出せないことがありますか
    ・周りの人から「いつも同じ事を聞く」などのもの忘れがあると言われますか

など、10個の質問に答えるだけで、認知機能について日常生活にどの程度支障がでているかを簡易的にチェックできます。

のうKNOW®

セルフチェックツール のうKNOW®︎の画面表示例

 「のうKNOW」はエーザイが提供する、ブレインパフォーマンス(脳の健康度)のセルフチェックツールです。

ゲーム感覚で記憶力や思考力、判断力などの脳のパフォーマンスをチェックすることができ、定期的にチェックすることで脳の健康度を把握することができます。

認知・記憶のチェックツールをご紹介しましたが、一般的に、記憶力や認知機能は加齢とともに自然と低下することがあります。年齢相応のもの忘れであれば過度に心配する必要はありません。

もし日常生活に支障をきたすような深刻なもの忘れがあったり、周りの人から頻繁に指摘されたりする場合は、MCI(軽度認知障害)や認知症などの可能性もあるので、専門医への相談を検討しましょう。

記憶力を高める方法はある?

記憶力は鍛えることができます。
脳には生涯を通じて変化し適応する力(脳の可塑性)があり、適切な刺激や訓練によって、失われた機能が補完されたり2、記憶力向上に繋がったりすることがわかっています。

例えば、記憶を司る脳の部位である海馬(かいば)は、年齢を重ねても新しい神経細胞が生まれることが分かっています。

実際、一定強度の有酸素運動を半年以上続けると海馬で神経の新生が起こり、記憶力の維持・向上につながったという研究結果があります3

また、世界的な記憶力大会に出場するメモリーアスリートたちが用いる記憶術を、一般の人が6週間ほど訓練したところ、記憶力が向上し、脳内ネットワークのパターンもメモリーアスリートに近づいたという報告もあります4

記憶力は、生まれつき・成長の過程で身についたものだけでなく、トレーニングや生活習慣の改善によって伸ばせることがわかりますね。

【今すぐできる!】研究で解き明かされた記憶力を高める方法5選

ここでは、今日から実践できる記憶力アップのコツを5つご紹介します。

いずれも専門家や研究によって効果が認められた方法ですので、取り組みやすいものからチャレンジしてみてください。

十分な睡眠をとる

質の高い睡眠は記憶力向上に不可欠です。睡眠中に脳はその日に得た情報を整理・定着させています。

逆に睡眠不足だとこのプロセスが乱れ、記憶が定着せずもの忘れが増えてしまいます。実際、最低6時間以上の睡眠をとる人の方が記憶テストの成績が良好だったとの報告もあります5

夜更かしや寝不足が続いている方は、まずは睡眠習慣を見直してみましょう。

オメガ3脂肪酸を含む食品を食べる

食事や栄養は脳機能の維持に重要な要素のひとつです。
日頃からバランスのよい食事を心がけることが大切ですが、中でも青魚(サケ、マグロなど)やクルミ、亜麻仁シードに含まれるオメガ3脂肪酸は脳の健康維持に役立つ可能性がある栄養素です。

実際、週に1回以上、焼くか蒸すなどで調理された魚を食べることが、海馬などの脳の灰白質の体積が大きいことと関連していることが分かっています6

また、オメガ3脂肪酸のうちDHA(ドコサヘキサエン酸)は、胎児の発育から成人・高齢者の認知機能の維持まで、重要な栄養素であると考えられています7

食事で十分量摂取できればよいのですが、難しい場合はオメガ3脂肪酸を含むサプリメントなどから摂取してもよいでしょう。

適度な運動を習慣にする

身体を動かすことは脳の健康に直結します。
ウォーキングやジョギング、サイクリングなど有酸素運動を定期的に行うと、脳への血流が増えて記憶をつかさどる海馬が活性化します。

実際、中強度の有酸素運動を20分行ったグループは、その翌日に行った記憶テストで成績が向上し、その効果が8週間後まで持続したという報告もあります8

日常ではエレベーターの代わりに階段を使う、通勤時に一駅分歩くなど、無理のない範囲で体を動かす工夫をしてみましょう。

ストレスを減らし脳に休息を与える

過度なストレスや脳の酷使は記憶力の大敵です。

ストレスと深く関係する、免疫系で分泌されるサイトカインという種類の物質が記憶を司る海馬の神経細胞が新しく発生するのを阻害してしまう可能性があります9

これが原因で思考力や記憶力の低下を引き起こすこともあります。

対策として、深呼吸や軽いストレッチ、瞑想などでリラックスする時間を作りましょう。

脳を積極的に使う(学習や記憶のトレーニング)

脳も使えば使うほど鍛えられます。
認知面での負荷の高い新しい活動を続けることは、高齢期における記憶機能の向上につながるとされています。
具体的には、デジタルカメラを使うことや、手芸など10に継続して取り組むのがおすすめです。

記憶力を低下させるNG行動

記憶力の維持・向上には、トレーニングだけでなく、記憶力低下につながる習慣の見直しも大切です。
うっかりやってしまいがちだけれど記憶力に悪影響を与える行動についてみていきましょう。

当てはまるものがあれば、できる範囲で改善していきましょう。

睡眠不足

慢性的な睡眠不足は記憶力低下の大きな原因となりえます。
記憶学習当日の睡眠が傷害されると記憶想起に多大な支障をきたすという報告があります11

まずは夜更かしを控え睡眠時間を確保することが肝心です。質のよい睡眠のために就寝前のスマホ使用を控えたり、照明を落としてリラックスしたりといった工夫も試してみましょう。

喫煙

喫煙(タバコ)は脳の健康に悪影響を及ぼし、記憶力低下を招く代表的な要因です。

タバコに含まれる有害物質は体内で活性酸素を発生させ、細胞への酸素供給能力を低下させてしまいます。その結果、脳への血流や酸素供給が妨げられ、長期的には認知機能の衰えを早めると考えられています。

実際に5年間にわたり43〜70歳合計1,964名を対象とした研究では、喫煙習慣のある人は非喫煙者に比べ、全体的な認知機能は1.7倍低下したと報告されています12

このように喫煙は記憶力の維持以外にも健康上のリスクが指摘されているので、禁煙することが望ましいでしょう。

生活習慣の乱れ

不規則で不健康な生活習慣も記憶力低下の要因になりえます。

例えば、偏った食事をしていると、オメガ3脂肪酸など、記憶力の向上につながる栄養素13が不足しがちになる恐れがあります。

また、週3回の有酸素運動トレーニングを1年継続する人の群が、運動をしない群に比べて記憶機能に有意な改善を認めたという報告もあり14、運動不足の生活を続けていると記憶機能の改善の機会を失ってしまうかもしれません。

規則正しい生活リズム、栄養バランスの取れた食事、適度な運動を心がけるだけでも将来の記憶力低下リスクを減らすことが期待できます。

過労

働きすぎや過度の疲労(過労)も脳にとって有害です。長時間労働や休みなく働く生活が続くと、慢性的なストレス状態に陥りがちです。

前述した通り、ストレスによって放出されるサイトカインによって、海馬の神経細胞の新規発生が阻害される可能性があります。

その結果、思考力や集中力の低下、もの忘れの増加といった症状が現れることがあります。

そうならないためにも、適度に休息を取り入れ、働き方を見直すことが大切です。十分な睡眠を確保するのはもちろん、休日には仕事のことを忘れてリラックスする時間を持つ、趣味や運動でストレスを発散するなど、脳を休ませる習慣を意識しましょう。

まとめ

記憶力は年齢とともに衰えるものだと諦めている方もいるかもしれません。しかし、実際には日々の心がけ次第で維持・向上させることが可能です。

本記事で解説したように、十分な睡眠や栄養バランスのよい食事、適度な運動といった基本的な生活習慣が記憶力アップの土台となります。加えて、脳に新鮮な刺激を与える学習や読書、ストレスを溜めない工夫などを取り入れることで、脳のパフォーマンスを高く保つことができます。

逆に、睡眠不足や喫煙、乱れた生活習慣、過労といった要因はせっかくの努力を台無しにしかねません。まずはできることから1つずつ、生活を見直して、記憶力をもっと高める土台作りをしましょう。

【参考文献】


1, 藤井 俊勝: 記憶とその障害. 高次脳機能研究 (旧 失語症研究). 2010;30(1):19-24.
2, 髙宮 考悟: 学習・記憶におけるシナプス可塑性の分子機構. 生化学. 2011;83(11):1016-1026. 
3, Kirk I Erickson, et al:Exercise training increases size of hippocampus and improves memory.2011;108(7):3017-22.
4, Martin Dresler, et al:Mnemonic Training Reshapes Brain Networks to Support Superior Memory.2017;93(5):1227-1235.e6.
5, Mikaela Bloomberg, et al:Associations of accelerometer-measured physical activity, sedentary behaviour, and sleep with next-day cognitive performance in older adults: a micro-longitudinal study.2024;21(1):133.
6, Cyrus A Raji, et al:Regular fish consumption and age-related brain gray matter loss.2014;47(4):444-51.
7, Francine K Welty: Omega-3 fatty acids and cognitive function. Curr Opin Lipidol. 2023;34(1):12-21.
8, Noriteru Morita, et al:Movement boosts memory: Investigating the effects of acute exercise on episodic long-term memory.2025;28(3):256-259.
9, 田中喜秀:薬学領域におけるストレス研究の最前線.ライフサポート.2010;22(3):90-95
10, Denise C Park, et al:The impact of sustained engagement on cognitive function in older adults: the Synapse Project.2014 Jan;25(1):103-12.
11, 栗山健一:睡眠研究の動向 1.睡眠と記憶,認知機能.日本生物学的精神医学会誌.2011;22(3):151-157.
12, Astrid C J Nooyens, et al:Smoking and cognitive decline among middle-aged men and women: the Doetinchem Cohort Study.2008;98(12):2244-50.
13, 橋本道男:脳・神経機能維持とn-3系脂肪酸.日薬理誌.2018;151:27-33
14, 牧迫飛雄馬:運動による身体活動向上と認知症予防.理学療法の科学と研究.2018;8(9):3-6.

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