「最近、少し疲れやすくなったように感じる」「歩くのが以前よりゆっくりになった気がする」60代になってから、このような小さな変化はありませんか。
それは、年齢とともに筋力が低下してきているサインかもしれません。
今回は、60代の女性でも自宅で無理なく始められる、簡単なトレーニングをご紹介します。
身体への負担を抑えながらも、初心者の方にもぴったりのトレーニングです。毎日の運動習慣に取り入れてみてくださいね。
60代女性が筋トレをする4つのメリット
年齢を重ねるごとに、基礎代謝や筋力は衰えてしまうもの。
しかし、筋力は年齢に関係なく鍛えることができるので、60代だからこそトレーニングで筋力を維持し、健康的な老後を過ごしましょう。
まずは、ここでは、60代からの筋トレで得られる4つのメリットをご紹介します。
骨粗鬆症や重大な病気のリスクを低減できる
筋トレによって骨に刺激が加わり、骨密度を上げる効果が期待できます。
女性は男性よりも年齢とともに骨密度が低下しやすいです。60歳の女性の5人に1人が骨粗鬆症であるのに対して、70歳の女性は3人に1人が骨粗鬆症1と言われています。
骨は刺激が加わることで、強度が増すといわれている2ので、60代のうちからトレーニングを始めることで骨粗鬆症の予防につながります。
筋トレをすることで骨密度が1~3%改善したという報告3があります。また、筋トレで転倒や骨折のリスクも低減できるだけでなく、心血管疾患、がん、糖尿病の発症リスクが低下する4効果も期待できます。
サルコペニアを予防できる
サルコペニアとは、高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下のことです。
筋肉量は25~30歳ごろから少しずつ減少4し始めます。活動的でない成人は、10年ごとに筋肉量の3〜8%を失うとも言われています2。
サルコペニアの主な要因は加齢ですが、活動不足や疾患、栄養不良がリスクだと言われています4。サルコペニアの症状には、転倒しやすくなる、歩くのが遅くなる、ペットボトルのふたが開けにくくなる、ふくらはぎが細くなる、などがあります。
サルコペニアの予防には筋トレが有用と考えられていて、日常生活での基本的な動作能力の改善や転倒予防といった効果も示されています。また、タンパク質の摂取と併せるとより有効と言われています5。
フレイルを予防できる
フレイルとは加齢により心身が老い衰えた状態のことで、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します。
フレイルは、慢性的な低栄養やサルコペニアなどの要因をきっかけに生じ、それぞれの要因が関係し合って悪化します。その悪循環を絶つには、持病のコントロールや運動、栄養療法、感染症の予防などが効果的とされています6。
筋トレなどの運動により、骨粗鬆症やサルコペニアのほか、フレイルの予防も期待できます。
身体にさまざまな変化を良い変化をもたらす
筋トレは、生活に支障をきたす危険を回避するだけでなく、身体にさまざまな良い変化をもたらします。
代謝が改善する
筋トレをすると、糖代謝が改善します。
内臓脂肪の減少の他、HbA1c(ヘモグロビンA1c)の低下、グルコース輸送体(GLUT-4)の密度増加、インスリン感受性の向上などの働きにより糖尿病の予防や糖尿病の管理に役立ちます2。
全身の血行が良くなる
筋トレによって、安静時の血圧の低下やLDL(悪玉)コレステロールの減少、中性脂肪の減少、HDL(善玉)コレステロールの増加が期待できます2。
また、ふくらはぎを中心にした筋トレも行うと、ふくらはぎの筋肉の収縮によって血液を心臓へ戻すポンプの役割も加わり、血行はさらによくなります。冷えやむくみの改善にもつながります。
この内容はこちらの記事に詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。
関節の柔軟性が良くなる
筋トレは関節の柔軟性向上につながる可能性がある7という報告があります。柔軟性が上がれば、関節の痛みや不快感を軽減し、体の動きがスムーズになります。
睡眠の質の改善につながる
特に年齢を重ねた方や慢性疾患を抱える人において、筋トレをすることで入眠時間や主観的な睡眠の質を改善する可能性があることが報告されています8。
睡眠の質は健康維持のほか、認知機能の維持にも重要と考えられています。
自宅で無理なくできる!60代女性におすすめの筋トレ5選
スポーツジムにあるような機材がなくても、自宅でも簡単に筋トレを行うことができます。トレーニングを行うときは、足元や周囲の安全を保った状態で行うようにしましょう。
椅子での脚上げトレーニング
身近にある椅子を使ったトレーニングをご紹介します。
このトレーニングで膝関節への負担を減らすこともできます。
- ・まず、椅子に座った状態で3秒かけて膝を伸ばし、3秒伸ばしたままキープします。
・3秒かけて膝を曲げましょう。
・この動作を両膝10回、できれば3セット行いましょう。
余裕のある方はチューブやおもりを足首につけるのも効果的です。
片足立ちトレーニング
年を重ねるごとに、筋力だけでなくバランス感覚も衰えてきます。
60代での片足立ち可能時間(閉眼)は平均33秒間ですが、70代になると18秒間、80代になると6秒間という報告9があります。
実は、1分間の片足立ちは53分間のウォーキングと同じくらい大腿骨の付け根に刺激を与えることができると言われている10くらい、効率のよいトレーニングです。
片足立ちを行うときは、次のポイントを押さえておきましょう。
- ・壁やテーブルの近くなど、支えになるものがある場所で行いましょう。
・足は5cmほど上げてつま先が床から離れていれば十分です。
・筋肉痛がなければ毎日少しずつ行うことが理想的です。
・最終目標は1分間を3セットです。
・余裕がある方は目を瞑ってみたり、浮かせた足を前後に振ってみたりしましょう。
足指のトレーニング
足の指の筋力を鍛えることで、転倒を予防できるだけでなく足の裏の痛みや外反母趾の予防の効果が期待できます。
足の指のグーパーをゆっくり1日15回行いましょう。
入浴しながら、歯磨きをしながら、テレビを見ながら、さまざまなシーンで取り入れてみましょう。
足の指を動かすのが難しい場合は、手で足の指の動きを補助してあげると良いです。慣れてきたら、床においたタオルを足のゆびでつかむ運動も効率的です。足の裏がつってしまうことがあるので、その場合は無理せず中止してください。
椅子スクワットトレーニング
スクワットはお尻周りの筋肉を鍛えることができます。椅子を使ったスクワットなら、膝への負担が小さく安全に効果的に足腰を鍛えることができます11。
- ・普段使用している椅子に座った状態からスタートしましょう。
・座りやすい座面の高さのものを選びます。
・両足は肩幅程度に開き、つま先はまっすぐか少し外側に向けましょう。
・腕を前に伸ばして、体を前傾させながらゆっくり立ち上がりましょう。体を前傾させることで膝から下に力がしっかりかかり、立ち上がりやすくなります。
・立ち上がったら、全身を伸ばしましょう。
・その後ゆっくり腰を落としていき、元の姿勢に戻ります。
・この立ち上がりと座り込みを10回ほど繰り返しましょう。
慣れてきたら回数を増やしてみてください。
かかと上げトレーニング
スクワットでは鍛えられない、ふくらはぎの筋肉へのトレーニングです。
足を肩幅ほどに開き、両足のかかとをあげて、おろすだけの単純な動きです。難しい場合は椅子に座ったままでもよいです。10〜20回を3セットを1日に行う目標としましょう。
余裕があれば片足で行ったり、かかとを上げたまま3秒キープしてみましょう。
60代女性におすすめの筋トレの頻度
筋トレの頻度は、週2〜3回が推奨されています12。
筋トレを始めたばかりの時は筋肉痛が長引く可能性があります。無理せず続けられるよう、まずは週1回から始めてみましょう。
慣れてきたら3日に1回のペースを目標に続けてみましょう。
60代女性が自宅で筋トレをするときに気を付けたいこと
どんな運動にもケガのリスクや思いがけないアクシデントが生じる危険性があります。
自宅での筋トレをするときは、次の3つに気を付けましょう。
ウォーミングアップを行う
ウォーミングアップによって体温や筋温を上昇させ、関節可動域を広げることで怪我のリスクを下げることができます。
心拍数や呼吸数を徐々に増加させることで、心臓や肺への負担を減らすことにも繋がります。
ウォーミングアップと言っても特別な運動でなくても構いません。
肩を回しながらの深呼吸、立ち上がる前にその場で足踏みをする、反動をつけない軽いストレッチなどがおすすめです。
健康状態によって臨機応変にスケジュールを組む
筋トレは継続的に行うことが大切です。
一方で、仕事だけでなく、旅行や病院の受診などさまざまな予定があったり、体調が優れなかったりすることもあるでしょう。
疲れがたまっていたり、筋肉痛や体調不良の時は決して無理をせず休むようにしてください。
腰や膝などに痛みがある場合は医師に相談をする
持病がある、体に不調がある場合は、トレーニング前に医師に相談しましょう。
関節の痛みや動きの制限、手足の痛みやしびれがある状態での筋トレはおすすめできません。
また、筋肉痛のような痛みが長く続く場合にも注意が必要です。
思わぬ病気が隠れている可能性もあるため、異常を感じた時には医師に相談するようにしましょう。
筋トレをしたらタンパク質をしっかり摂ろう
自宅筋トレとあわせて、食事を工夫すると相乗効果を期待できます。
特にタンパク質は筋肉を作る上で不可欠な栄養素なので、食事からしっかりと摂るようにしましょう。
60代の女性のタンパク質の推奨摂取量は、1日50gとされています13。
摂取量は、「手ばかり栄養法(「手で計る」の意)」が参考になります。魚や肉類などのタンパク質を豊富に含む食材を、「自分の両手にのるくらい食べる」というものです14。
毎日は難しいかもしれませんが、できるだけバランスの良い食生活を心がけてくださいね。
まとめ
年齢、場所を問わず、筋トレはいつでも始めることができます。座ったままできるトレーニングも多いので気分転換にもなるはずです。
無理のない範囲で休息をとりながら、身体にあわせた筋トレを始めて、いきいきとした毎日をつくりましょう。



