「最近あまり集中できない」「気が散りやすい」と感じることはありませんか?
集中力の低下は誰にでも起こりうることですが、なかには病気が関係していることもあります。
人の注意力や集中力について、そのメカニズム、さらに具体的に注意力の低下が起こる日常場面や対処の方法などからひも解いてみましょう。
誰でも注意力は低下する
どんなに優秀な人でも、注意力が低下することはあります。例えば、睡眠不足で注意力の低下を経験している方は少なくないはずです。
実際に、睡眠不足についての研究では、徐波睡眠の障害により、ポジティブな感情の低下、情報処理速度の低下または障害、持続的注意力の低下など、日常生活に支障をきたす変化が身体に起こりうることを報告しています1。
また、精神的・肉体的に衰弱をさせてしまうようなストレスも、注意散漫につながるとされています2。ほかにも、特に高齢者で脱水傾向にあると注意力や記憶力の低下につながる可能性も示唆されており3、日常生活で遭遇しやすい因子によって、誰にでも注意力の低下はおこる可能性があります。
注意力に関する問題の種類とは?
注意力が下がるといっても、そのパターンは1つではありません。ここでは、代表的な種類と具体例を挙げながら解説していきます。なかには、知っておいた方が対処しやすくなるものもあるので、ご自身に当てはまるものがあるかどうかを考えながらみてもよいかもしれません。
聞くべき音・見るべきモノに集中できない
これまでの研究で、背景騒音が「コミュニケーションの妨害、眠気、効率の低下」といった悪影響を及ぼすことが指摘されており、特に75dB(屋内で揺れを感じるレベル)を超える背景音は認知過程を著しく阻害し、そのなかでも視覚的注意に大きな影響を与えると言われています4。
実際に、学生に数学のテストを背景音の有無を分けて実施し、注意力と試験の成績に差が出たかを比べた研究もあります。その研究の結果では、背景音は注意力と成績の両方に悪影響を及ぼすことが確認されています4。
このように、一般的には背景音などの刺激があると、聞くべき音・見るべきモノに注意を向けにくくなる傾向があるので、勉強などをする場合は静かな環境がよいかもしれません。
複数のことを同時に実行できない
複数のことを行うとき、人は無意識に注意の持続を行いながら、注意の選択(ほかの興味の抑制)、注意の分配や注意の転換を行っています。注意障害があると、今までできていたはずの同時並行の作業がしにくくなります。
車の運転について考えてみましょう。運転中は運転以外のことには注意を向けない努力が必要で、注意の選択(ほかの興味の抑制)が必要です。そして、前方全体を漠然と見て、レーンの白線、信号機、対向車、歩行者や自転車などにも注意を配る必要があります。さらに、注意を分配しながら、対向車や歩行者の状況に応じた注意の転換が必要です5。
このように、車の運転などでは注意力を調節しながら複数のことを実行しています。ほかにも、会話をしながら家事をすることや、資料を読みながらメモを取るなどの日常的な行動にも注意力は影響を与えています。
頭と身体が短時間で疲れやすい
さまざまな脳や神経の病気の注意障害と慢性疲労との関係性が注目されています9。慢性疲労があると、頭や身体が短時間で疲れやすくなります。健康な方でも心当たりがあるかもしれません。
視覚・聴覚・嗅覚が敏感になる
注意障害が症状の1つであるADHDと、感覚過敏との関連性も注目されています7。感覚過敏があると、光・音・匂いなどに対して過敏に反応してしまい、日常生活に支障をきたすことがあります。
例えば、蛍光灯のちらつきを不快に感じ集中できない、複数の人の話し声が雑音のように耳に響く、香水や食べ物の匂いで吐き気を催す、というようなケースです。
落ち着いて暮らすための環境作り
これまで述べたように、集中するためには刺激に対する注意を上手にコントロールしなくてはなりません。何らかの疾患があったり、年齢を重ねたりなどの背景がある場合は、コントロールしやすくなるように、落ち着いて暮らすための環境作りが大切です。
ここでは、落ち着いて暮らす環境作りをするための工夫について紹介します。
目に入る刺激を減らす
視覚的な刺激が過剰だと注意の選択性や持続性に影響を与える可能性があります。そのため、視覚的な刺激を抑えることで、注意力の維持がしやすくなります。
例えば、蛍光灯が点滅している場合は早めに交換する、鮮やかな色の家具を避けるなどの工夫をするとよいでしょう。
強すぎる匂いを避ける
強すぎる匂いも刺激になってしまいます。香水、ルームフレグランスや柔軟剤などは適量での使用がおすすめです。
音の刺激は少なめに
音の刺激もなるべく少なくしましょう。道路の騒音が気になる場合は遮音性のカーテンを用いることをおすすめします。静音タイプの家電を選ぶのもよいでしょう。
大切な情報を目立たせる
学生時代に教科書にマーカーを引いた方も多いのではないでしょうか?
大切な情報はマーカーを引いたり、大きくしたり、優先度の高い順にしたりなどの工夫によって、目立たせることが可能です。
まとめ
注意力に関係する脳の働きは、加齢のほか、認知症などの疾患により低下することがあります。注意力が低下することで生じる、集中できない、感覚が過敏になるなどの症状は生活に影響します。
環境を整えて、刺激をやわらげる工夫をすることで、より快適に過ごせる時間を増やしましょう。